当たり前の境界を壊したい!Roots代表 國分隆さんのまちづくりに見る未来とは

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“Back to Basics,Think Good Circle.”

今回は、”それぞれのRootsから世界にGood circleを”というパーパスのもと、ベンチャー企業ならではの起点を利かせてまちづくりに全力で挑む、株式会社Rootsの代表 國分隆さんに取材をしてきました。

 

“繋がり”を循環させる

株式会社Rootsが拠点を構えるのは、首都圏のベッドタウンとして多くの住宅が建ち並ぶ埼玉県草加市の谷塚エリア。ここは今まさに、これからの10年、20年のためにまちをリノベーションしようと動き出したエリアです。

代表の國分さんは埼玉県日高市のご出身ですが、大学在学中に初めての一人暮らしで移り住んだのが草加市でした。就職を機に上京し、イベントプロデュース会社から独立される際に生活と仕事の拠点を再び草加市に構えることに。現在はイベント業を見つめ直して、まちづくりの会社へ舵をきったところです。

2018年10月の創業から、1年半ほどで新型コロナウイルスによるパンデミックに見舞われ、一時は売上やクライアントとの取引がほとんどなくなった瞬間もあったという株式会社Roots。

会社を守っていくためのフレキシブルな動きと、一方で湧き上がってきたまちづくりに対する想い。

人と人、まちと人、コトとまち、それらの繋がりや循環を大切にする國分さんご自身のルーツは何なのか。その視点の変化とともに、國分さんが描く未来を探ります。

 

「おかえり」を言ってくれる場所

前職のイベントプロデュース会社から独立し、株式会社Rootsを立ち上げる際に大学生時代を過ごした草加市を選ばれた國分さんですが、ご自身にとって草加市はどんな場所なのでしょうか?

國分隆さん:私にとって、草加市は地元にも負けない”故郷”のような場所ですね。

大学生時代は大学もアルバイト先も全て草加市内にあったので、生活や人脈の全てがここで完結していました。
就職をして東京に移り住んだのですが、騒々しい日々に少し疲れてしまった時、ふと実家に帰るように学生時代のアルバイト先「草加 加賀廣」に行くと、店主やスタッフ、常連さんも数年前と変わらず温かく「おかえり」と迎え入れてくれて、すごく安心したんです。

それをきっかけに、意識的に草加へ帰ることが増えていき、会社から独立する際には草加に戻ろうと考えるようになりました。そして、いよいよ草加に戻って暮らし始めてみると、自分自身が大学生から「所帯持ち」に変わったこともあり、今まで気づかなかったまちの暮らしやすさに気が付きました。


ー大人になったり、家族ができたりするとまちを見る視点大きく変わりますよね。草加に戻られたのは独立されたタイミングでもありますが、そこからなぜ谷塚のまちづくりに辿り着いたのでしょうか

國分隆さん:約10年ぶりに草加に住んでみると、ただ私の視点が変化しただけではなく、確実に変わっている部分もたくさんあって、どうしてこんなに変わったのかを行政に聞いてみたんです。すると、10年前に草加市が「リノベーションまちづくり」という商店街活性化の取り組みを始めていたのだとか。そこから、まちづくりについて調べるようになり、ちょうどそのタイミングから始動した谷塚のリノベーションまちづくりに参加することになったんです

谷塚というまちは、老舗の個人商店が多くあり、チェーン店などによる画一的なまちの風景ではなく、住民規模による暮らしが根付くところです。各世代に、谷塚を盛り上げようとするコミュニティが既に存在しているのですが、私たちは”次につなげる存在”として、この想いの中に加わっていきたいと感じました。その覚悟から、思い切ってオフィスも谷塚へ移転することにしたんです。

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「まち=居場所」をつくる

ー「居場所を提供する側になりたい」と考える國分さんのモチベーションはどこに起因するのでしょうか?

國分隆さん:イベントプロデュースをしている中で、企業や行政などのクライアントが喜ぶ姿にやりがいを感じていたものの、もっとイベント来場者を喜ばせることができるのではないかと、どこかもどかしさを感じる部分がありました。

それはきっと大学時代のアルバイト先が自分の心地よい空間だったことにあります。そのお店では、最低限のルールやマナーを守れば、あとは自分がやりたいようにできる職場でした。そこで、あれこれ試したり、お客さんを喜ばせたりすることがやりがいになっていたんです。

だからきっと、「Rootsのおかげで、まちが変わったよね」と言われたり、Rootsのメンバーが生き生きと働くことでまちの人が喜んでくれる、そんな未来を実現させようとする気持ちが強いんです。それがモチベーションですね。

 

ー大学時代のアルバイト先が、ある意味で國分さんの思い描く理想なのですね。そのお店はどんな空間を作り出していたのでしょうか?

國分隆さん:学生時代のアルバイト先「草加 加賀廣」のバリューは”元気・活気・賑やか”。孤独や寂しさとは無縁の空間で、自分の居場所を求める人にとって「明日からまた頑張ろう」と思える最高の場所ですね。常連さんも初めての人を快く受け入れてくれる”暖かい空間”を作り出していたと思います。ここで、私は商売の大事な”人情”を原体験として学びました。

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谷塚について議論中の株式会社Rootsメンバーとまちづくり仲間

 

「会社を守る」と「会社をやる意味」

ー創業から半年ほどでパンデミックと直面することになった株式会社Rootsですが、イベント会社がコロナ禍に耐えて、まちづくりの会社としてリスタートを切るまでには、どんな経緯があったのでしょうか?

國分隆さん:2020年2月中旬からイベントのキャンセルが相次いで、2カ月間ほど売り上げが0になりました…「違う事業に乗り出さないと生き残れない!」と、当時人手不足だった宅配便の仕事を請け負っていた時期もあります他にも、コロナに伴う行政の臨時的業務の委託を2年間ほど

未曾有の事態に直面し、きっとあの時は多くの人が、今まで当たり前だった”家族や友人との時間”が最も価値ある時間だったことを再認識したことと思います。私たちも、会社を守ろうと必死になっていながらも「本当の幸せ・豊かさとは何か」を見つめ直しました。そして、コミュニティや人との繋がりの重要性を再認識していったように思います。


ーそれで、思い切って会社を1から作り直そうと考えられたのですね。

國分隆さん:そうなんです。2022年秋に会社の今後や「会社の存在意義」を話し合った結果、イベント事業のあり方を見つめ直してコミュニティプロデュース事業を主に展開していくことにしました。

まさに今、軌道修正をしてここから進みだすスタートラインに立ったところです。
思い切った決断でしたし、もしかしたら失敗して元の態勢に戻る可能性だってあります。でも、挑戦せずに後悔したくはないんです。

 

みんなで、軌道修正をする

ー株式会社Rootsはコロナ禍でメンバーも増員、そして今、会社全体が大きく軌道修正。メンバーの皆さんの意識転換はどのように図っているのでしょうか。

國分隆さん:正直なところ、まだ完全に意識転換が行き届いていると断言できない状態で、戸惑っている部分も当然あると思います。でも、試行錯誤しながら、みんなで前向きに進むことができています。

「そもそもチームでやりたかったことってなんだっけ?」と、すぐに話し合うことができることがRootsの強みであると考えています。

株式会社Rootsとまちづくりの仲間たちが構想するビジョン資料の一部


株式会社Rootsはまちのコミュニティプロデュース事業に進出されたわけですが、今後は谷塚エリアをどのようにリノベーションしていこうと描いているのでしょうか。

國分隆さん:つながりを循環させることが株式会社Rootsのミッションだと思っています。

特定の”孤独なひと”を対象にまちづくりをするのではなく、”誰もが抱えているであろう孤独”を解消できたら嬉しいです。社会が抱える大きな問題を解決できるほどRootsは大きくはないかもしれませんが、一歩踏み出せずにいる人に声を掛けて、肩を組んで「一緒にやろう!」と挑戦できるような存在になりたいと思っています。

家族や友人、仕事仲間といった垣根を越えて顔の見える関係性を作ったり、肩書や役職など境界線を生む”当たり前”や”常識”を取っ払ってコラボレーションするような、そんなまちづくりに貢献していきたいですね。

そういった意味では、僕のルーツの「草加 加賀廣」と、職種は違えど目指す世界線は一緒なのかもしれません。

 

連続的で、境界線のない関係性を

ー元アルバイト先以外にも、國分さんの”ルーツ”と言えるものはあるのでしょうか。

國分隆さん:実家の環境と、小・中学時代の「よさこい」での経験がルーツになっていると思います。

私の実家は、兄弟たちそれぞれの友人がたくさん集まり、まるで学童のようにみんなでご飯を食べたり、遊んだりする家でした。

また、よさこい踊りでは、数百人規模の団体に加入しており、全国各地のお祭りを廻りました。まちを練り歩いた後の打ち上げは、みんなでどんちゃん騒ぎ。小・中学生ながら、大人も子どもも楽しんでいる空間に充実や幸福、安心を感じていた記憶が強く残っています

実家、よさこい、アルバイト先、この3つに共通して存在するものは”連続的で境界線のない関係性”だと思っていて、これは会社の理念にも入れ込んでいる重要な事業テーマでもあります。

 

余白を見つけて、ひとつずつ共創する

ー株式会社Rootsと谷塚の未来のために、今していること、できることは何だと考えていますか。

國分隆さん:現在、町内会・商店会の方々などいろいろな立場の方と一緒に、どのようにまちをデザインしていくべきか議論を重ねています。立場が違うと地域に対して見えているものも違うので、うまく取り持つのは大変ですが、これを乗り越えることで、よりよい谷塚をつくっていけると信じています。

僕たちは”まちづくり”を考えるとき、「朝起きてから寝るまで、どういう1日を過ごせると自分たちの暮らしが豊かになるか」「家族や友人を招待できるか」を軸に置いています。

それを考えると、谷塚には利便性や楽しみが不足しているのではないかと。スタバやオシャレなカフェもなくマーケットやイベントも少ないので、まずそこから取りかかりたいですね。もちろん、新しいことを始めるだけではなく、まちの今ある魅力を活かしていきたいです。

成果が出るのは10-20年後だと思いますが、将来まちがどうなっているかを想像して1つずつ決めていくのは楽しいです。もちろん、やりたいことを一方的に押し付けるのではなく、地域の方々に納得してもらいながら、よりよい谷塚をつくっていきたいですね!

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國分 隆さん
くにぶ りゅう|経営者


1991年生まれ。埼玉県日高市出身。株式会社Roots代表取締役・プロデューサー。
国や自治体、企業イベントの企画・制作・運営業務に従事する中、2022年に自社リブランディングを実施。イベントプロデュースからコミュニティプロデュースへの移行をはかるうえで、埼玉県草加市・谷塚のまちづくりに携わるための場所や機会を創出する。プライベートでは、2人の娘を溺愛するパパであり、サウナとダンスをこよなく愛する。

株式会社Roots公式HP:https://rootsinc.co.jp/

   
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