shabellbaseのテーマでもある、自分らしさを「働く」でも実現するということ。
自分らしさの実感の尺度として、充実感や熱中度を挙げる人も多いと思います。
学生時代は、自分が好きなコトや興味があるコトに自分の時間を自由に使うことができ、充実も熱中も自分で掴みやすかったはずです。
それが、仕事ではどうでしょうか?
今回は、現在キャリアコンサルタントとして活躍している磯西さんが、ご自身のキャリアを自分らしく作るまでどのような経験と気づきがあったのか伺いました。
これを読みながら、今ご自身がやっている”コト”ではなく、どんな”スタンス”で向き合っているかに注目してみませんか?
ちょっとだけ捉え方を変えてみると新たな発見があるかもしれません。
自分の興味関心に一直線だった学生時代
ー現在は大学のキャリアセンターで大学生の就職やキャリア選択の相談相手を務められている磯西さんですが、ご自身はどのような学生生活を送られていたのですか?
磯西 美帆子さん:幼い頃は外で活発に遊ぶことも好きな一方、ピアノとエレクトーンなどの習い事も一生懸命やっていました。
そのため、部活を決めるときには悩みましたが、自分にとっては音楽で得られる感動の方が大きいように感じて、吹奏楽部に決めました。
中高はとにかく部活に明け暮れる毎日でした。
ピアノは3歳から弾いていたので、物心つく前から音楽に触れていました。
コンサートを見ることも好きで、小さいころからなんとなく、芸術への憧れがあり、高校卒業後は、芸術を学べる大学へ一浪した末に進学しました。
大学は面白い授業が多くて、例えば映画論の授業で古い映画を見たり、西洋の美術史や心理学を学んだりと、とにかくいろんなことを幅広く学びました。
中高は部活に夢中だったこともありますが、なによりも勉強する意味がわからなかったんです。
いい大学に入るために勉強することに、意味を見出せなかったんですね。
でも、大学では自分の興味がある分野や学びたいことが学べるし、勉強する理由を考えることもなく、勉強に集中できました。
それに、ちゃんと勉強したら自分はどこまでいけるか、試したいという気持ちもあり、しっかりとノートをとったり、テストでいい成績を残すことに力をいれていましたね。
やりたいことが仕事(現実)になる難しさに直面
ーそれでは、やはり就職先も芸術関係を目指そうというふうに思われたのですか?
磯西 美帆子さん:そうですね。
芸術や音楽に携わる仕事に就きたいという思いがあったので、他の人より早い段階で動き始めなくては、と考えていました。
周りは、まだまだ就活を意識していないころでしたが、大学2年生の頃から就活を視野にいれていましたね。
キラキラした業界への憧れが強く、その頃からテレビ局の説明会に参加したり、レコード会社のインターンシップに応募したりしていました。
ところが、その頃から勉強や就活が中心の大学生活に、友達などその他の要素が加わってきて、いつの間にかそっちのほうが楽しくなってしまって、、、、
気が付いたら4年生になっていました。
ー色んな人と関わって、自分の人としての幅が広がることも大学生活においては大事なことですよね。そこから就活を再開されたのですか?
磯西 美帆子さん:その時もまだ音楽や芸術に関連する仕事への興味や憧れはありましたが、そういった業界の忙しさや、土日祝日休みじゃないことへの不安を感じるようになっていました。
もしそういう業界に入ったら、私は一生懸命に働けるだろうけれども、今のように遊んだりできなくなってしまうのではないか、と考えたんですね。
それならば、今でなくても、いつか芸術に関わる仕事ができればいいかな、と切り替えることにしました。
ただ、それまで芸術や音楽系の会社を考えていたので、それ以外の業界が全くわからず、手当たり次第の就活でした。
それでもありがたいことに、就職支援課の掲示板で見つけた、名前を聞いたことがある家からも近いある金融系企業から内定を頂けて、4年生の秋ごろにようやく就職先が決まりました。
やりたくないことからスタートした社会人生活
ー金融系ですか!?それは、全く想定していないところに入社したんですね。その選択はすんなり受け入れられたのでしょうか?
磯西 美帆子さん:当時は、就職浪人を避けたい気持ちが強くて、全く予期せぬ場所に飛び込んでみましたが、蓋を開けてみると人に恵まれたこともあり、気づいたら10年働いていました。
もちろん、入社時点では「この会社で社会人経験を積んだら、もう1度、芸術や音楽の業界に挑戦しよう」という気持ちが心の奥底にありました。
ただ段々と、社会人はこういうものだとか、やりたいことを仕事にできる人はほんの一部だとか、仕事なんてやりたくなくて当然だとか、よくある言い訳が勝手に頭の中に刷り込まれていって、それに染まってしまった気もしています。
それまでは自分がやりたいかどうかで選択してきましたが、やはり現実を見ると「どうせ無理」と思ってしまって、、、
中学、高校の時と比べると、らしくない考え方になっていたかもしれないですね。
ーその10年間はどのような日々を過ごされていたのですか?
磯西 美帆子さん:最初に就いたのは、一般職の事務の仕事だったのですが、周りの他の人に比べると自分は向いてないな、と感じたんです。
かといって、営業とか他の仕事ができるわけでもないし、とモヤモヤしたまま続けていました。
そんな中、6年目を迎えた時期に部署異動があったんです。
事務の仕事も向いていないと感じていたのですが、それよりもやりたくないと思っていたのが、電話対応の仕事でした。
会社にも避けたい業務として伝えていたのにも関わらず、なんとコールセンターに異動になってしまって、、、
さすがにこのときは、「1年やっても慣れなかったら、転職しよう」と、初めて転職を現実的に考えましたね。
続けていてもやはり慣れなくて、結構悩んだのですが、途中で変化が起きたんです。
それまでは、お客様の電話を受けるお仕事だったのですが、お電話をお客様にかける仕事に異動になりまして。
そこでは、ある程度決まった流れでお話することと、自分のタイミングでかけられるということもあって、やっていくうちに自信がつくようになったんです。
仕事との向き合い方を変えた先で手にした充実感
ー自分から主体的に動けない、受け身であるということがストレスだったんですね。
磯西 美帆子さん:そうですね。
さらにそこから半年ほどして、今度はグループ会社の立ち上げたばかりの部署にスーパーバイザーとして出向になりました。
今思えば、そこが一番の転機だったんだなと思います。
なにもなかったので、どうしたらうまく仕事が進むかを考えながら、マニュアルを作ったり、人に教えたりと色んなことを経験しました。
この経験を通じて、苦手意識を持っていた”電話でお客様と話すこと”もとても楽しくなりましたし、人に教えるのが好きであるということにも気がつきました。
ー仕事内容は同じなのに、捉え方が全く変わったのはなぜでしょうか?
磯西 美帆子さん:これまで向いていないと思っていたのは、仕事内容ではなく向き合い方が原因で、主体的に動ける場所に行ったら楽しめるんだということを発見できたんです。
十年間で得た大きな学びですね。
最初の頃は、1つ1つの仕事をなんのためにやるのかを理解していなかったんだと思います。
事務の仕事なんかは特にそうだったと思います。
それが、自分のやっていることは、何のためなのか、誰のためなのか、意味付けできるようになって頑張れるようになりましたね。
ただ楽しくなってきたと同時に、出向していたのでいつかはまた元の環境に戻される日が来るという現実もみえてきて。
ここでようやく転職しようと決意しました。
やりたい仕事に再び挑戦して得た、予期せぬ学び
ーそこからどのように次のステップへ踏み出したのですか?
磯西 美帆子さん:せっかく転職をするなら、やっぱり音楽や芸術が携われるところに挑戦したいなとは思ったのですが、そういった業界は専門的な経験を問われることが多く、自分には何ができるのか少し考えました。
そうしたら、やはり前職でずっと携わってきた、コールセンターの仕事が思い浮かんで、すぐに募集がないか探してみると、偶然にもある企業で募集があり、運良くそこに入社することができました。
初めての転職で憧れの業界に触れられる機会を手にしたんですが、金融業とサービス業ではあまりにも文化が違い、休みも勤務時間も異なるのにも全く慣れず、他の部署に異動することが難しいという現実も知って、結局半年で退職してしまったんです。
ーせっかく憧れの業界に身を置くことができたのに、もったいない笑
磯西 美帆子さん:まったく未練がないといえば嘘になりますが、その時の転職活動は、ほぼその企業だけしか受けていなかったんです。
それでも、入社することができた経験から、入りたいと思った企業や業界に正しくアプローチすれば、チャンスは掴めるんだという自信がついたのだと思います。
その業界への携わり方も色々あるんじゃないか、とも考えていました。
この経験も、周りからみたら失敗のように見えたかもしれませんが、自分では比較的前向きに捉えられていて、ようやくスタートラインに立ったような感覚がありましたね。
キャリアコンサルタント資格取得で得たかったもの
ー自分で選んで決断したからこそ、前向きに捉えることができたんですね。
磯西 美帆子さん:たしかに、そうかもしれませんね。
ただ、失敗とは捉えていなかったものの、少し焦って決断したなという反省はあったので、もう少し自分と向き合うべきだなと考えました。
とはいえ、働かない訳にはいかないので、派遣で働きはじめることにしました。
が、実際働き始めたら、とても充実した日々を送ることができ、あっという間に時間が経っていきました。
そんな中、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で出勤停止になり、ここでようやくじっくり考える時間が持てるようになり、何か資格を取得しようという結論に至りました。
ーたくさん資格がある中で、キャリアコンサルタントを選んだのはなぜでしょう?
磯西 美帆子さん:大きく分けると2つあるかなと思います。
1つは、コールセンターでの経験から人と会話をすることに対して自信がついたこともあり、今後仕事にしていくなら、人と話す仕事がいいなと思うようになったからですかね。
あとは、色々な経験をしたつもりではいたけれど、履歴書など書類の上では自分の実績だと分かりやすく説明できるものが何もないように思えてしまったことですね。
自分には何も誇れるようなものがないとコンプレックスのようなものがあったのかもしれません。
その点において国家資格であるということが、自分の後ろ盾になってくれるのではないかと考えて選びました。
そして、それによって自分のキャリアについても道が拓けるかもしれない、という期待感もありました。
様々な経験を経て見えてきた自分らしい働き方
ー実際にキャリアコンサルタントの資格を取得されて、どのような変化が起きましたか?
磯西 美帆子さん:やはり”主体的に動くこと”が自分でも向いているんだな、ということを強く実感しています。
キャリアコンサルタントとして、面談やカウンセリングを行う上でも、私と相談者の間では私が語りかけて、私が動かないとことが進まないんです。
学んだセオリーやメソッドはありますが、相手によって対応方法は全て変わるし、マニュアル通りに進むこともなければ、誰かに指示をされるものでもありません。
もちろん、自分の好き勝手できるわけではなく、相談者に合わせて自分で考えて工夫していけるクリエイティブさが、自分らしく充実した仕事を作っているんだなと感じています。
今でも、苦手な事務作業はたくさんありますが、こういう主体的な側面が多くあるので、自分の中で上手く折り合いが付けられていますね。
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磯西さんは、部活選択時に感動というキーワードで選択をされていましたが、仕事において重視することも、人の心にふれたり、揺さぶったり、動かしたりすることをなのではないかなと感じました。
苦手な”コト”に囲まれて、そこでもがいた結果、自分が大切にしたい想いや得意な仕事の進め方に気づく。
好きなコト、興味のあるコトにとらわれずに、今の自分を見つめ直すことで発見できることはあるのかもしれませんね。
- 磯西 美帆子さん
いそにし みほこ|キャリアコンサルタント、大学職員神奈川県生まれ。大学卒業後、大手金融系企業にて一般職ながらグループ会社へ出向し新設部門に携わる。
約10年の勤務を経て転職、派遣社員などを経験しコロナ禍に自身のキャリアを見つめ直すと同時に、キャリアの専門資格に出会い資格取得。
現在は大学のキャリアセンターにて活動中。
所有資格:国家資格キャリアコンサルタント