自分のやりたいことを実現するために!多方面から「食」に関わってきた管理栄養士、柴崎裕香さんの仕事選びの軸とは

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毎日の食事、どんなことを考えて食べていますか?
なんとなく終えてしまう人も多いのではないでしょうか。

少し考えればわかりますが、私たちの食生活は、数え切れないほど多くの人たちによって支えられています。そして、その関わり方は多様ですよね。

今回お話を伺ったのは、これまで沢山の方向から「食」と向き合ってきた管理栄養士の柴崎さん。保育園の栄養士を経て、コンビニ弁当の商品開発も経験、そしてスタートアップ企業への就職…と異色のキャリアを積んでいらっしゃいます。
どんな思いがあってのキャリアなのか、大学生ライターが伺いました。

 

子どもの成長に驚いた、保育園の管理栄養士時代

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ーまず、どうして管理栄養士になろうと思ったのでしょうか?

柴崎裕香さん:幼いころから料理するのが好きで、昔はパティシエになりたいと思っていました。小学生の時から、料理の手伝いは結構していましたね。中学生の頃は、お菓子を作ってみんなに持っていくと、美味しいって言ってもらえるのが嬉しくて、どんどん作るようになりました。
高校に進学して、周りの友達が大学に行くと言っている中で、私も何か料理に関することを大学で学べないかと考えるようになりました。そこで調べているうちに、職業一覧で商品開発の仕事を見つけて、これがやりたいと思ったんです。先生に話したら、何を学んだら商品開発に関われるのかを教えてくれて、そのうちの一つが管理栄養士でした。料理が好きなこともあって、じゃあ管理栄養士の資格が取れる大学へ行こう、と決めました。

ーでも、新卒では保育園の管理栄養士さんとして働かれてますよね。それはどうしてですか?

柴崎裕香さん:初めは大学で臨床の研究室に入っていたので、病院栄養士になることを考えていて、管理栄養士の資格を取ったからには、なにかしら資格を活かして働きたいなと思っていました。就活で1つの選択肢として保育園を受けて、そのときの保育園の雰囲気がとても良かったので、子どもが好きということもあり、そこに決めました。

ー就活の時には、入学時とは違うところに関心があったんですね。

柴崎裕香さん:家族の影響で少しずつ変わっていきましたね。
私の父は中性脂肪が高かったり、タバコを吸っていたり、ザ・不健康みたいな人で、祖母も糖尿病になりかけているような感じだったんです。せっかく栄養の勉強しているので、臨床系のことも学んで、自分がアドバイスをして助けてあげられたらいいのかな、と思うようになりました。実際、食生活がこうだからこの数値が高いんだね、とか、これを食べた方がいいよってアドバイスができて、取り入れてくれたりもしたんです。そういう経験をして、やっぱり管理栄養士の資格を活かせる仕事にしようと思うようになりました。

ー保育園の栄養士ってどんなことをするんでしょう。ギャップを感じたことはありましたか?

柴崎裕香さん:保育園の栄養士は基本的に、献立を作成したり、もちろん調理業務もあるので調理したり、食材の発注をしたりして、空いた時間で子供たちに食育をしています。
ギャップに感じたのは、今の事業にもつながることですが、栄養士の仕事のうち、想像以上に給食を作っている時間が長いことですね。

ー印象に残っていることはありますか?

柴崎裕香さん:園で働いている間、私が150人の子供たちみんなの名前を覚えていたので、周りの人がどんどん保育室に行くことを勧めてくれました。自由に保育室に行って遊んでいるうちに、何人かとすごく仲良くなったりもして、そうすると、だんだん声をかけると食べてくれたり、「これ先生作ったんだよ」って言うと、「美味しいね」って言ってくれたり、そういう反応がもらえるようになったんです。
1人、食べることにすごく消極的で、小食で野菜がほぼ全部食べられない男の子がいました。でも、きっとその食材がどういうものか知らないから、怖くて食べれないのかなと思って、カットする前の食材を見せたり、触ってもらったりしていました。すると、もちろん保育の先生の働きかけもありましたが、 ある日から急にその子が給食を全部食べられるようになったんです。それだけでなく、自信がついたのか、性格も開放的になっていきました。
子供って何か一つのきっかけで、ここまで一気に変わるってことを目の当たりにして、とにかく衝撃的でしたね。やっぱり食育はやっていった方がいいんだなと強く感じました。

ー保育園から転職されたきっかけはなんだったんですか?

柴崎裕香さん:まず大きな理由は、3年間でやりきったと感じたことです。
2つ目に、私が働いていた保育園は食育に力を入れている園で、食材も国産だったり、調味料も添加物がほとんど入ってないものを選んでいたんです。そうして作る給食はもちろん美味しかったですし、子供たちの健康につながるような食材を使うことを、広めたいという思いがありました。
3つ目は、若気の至りみたいなところもありますが、もっと大きなスケールで自分ができることをしたいという思いで転職を決めました。
ただ、卒園遠足やお泊り保育にも参加させてもらえて、3年間本当に楽しかったので、園を去るのは名残惜しかったです。その時の園長先生には、「あなたこの仕事が天職なのに辞めるのね」って言われたくらいで、私もとても好きな仕事でした。

ーそうなんですね、保育園での食育ってどんなことをしたんでしょう。

柴崎裕香さん:紙芝居を通して、「朝ごはんは食べた方がいいよ」って伝えたり、包丁の使い方を教えたり、クッキーを作ったり、味噌作りもしました。普通に玉ねぎの皮むきのお手伝いをお願いすることもありました。あとはその園では、毎年サンマを園庭で丸焼きにして、みんなで一人一匹食べる行事もやっていて、3歳以上の子どもがみんな、まるまる1匹のサンマにかじりつくんです。このサンマってどこから来て、どこで大きくなったのか、お腹の内臓のところは食べたら苦いし、お腹が痛くなっちゃうから、食べたらダメだよみたいなことを伝えていました。そういう感じで、食材について伝えていく食育をしていました。
元々子供たちと関わるのが好きだったので、食育をやりたいと思っていましたが、提案したらどんどん自分でやっていいという雰囲気だったので、いろいろなことができました。

 

もっと社会に影響を!商品開発の道へ

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ー転職先にコンビニベンダーを選んだのはどうしてですか?

柴崎裕香さん:保育園よりも大きなスケールで仕事がしたいと考えたときに、管理栄養士になったきっかけが商品開発がしたいからだったことを思い出して、それができるところを数社受けました。その会社は大手コンビニチェーンに全てを卸しているところだったので、その規模の大きさに惹かれて決めました。

ーそちらでの仕事はいかがでしたか?

柴崎裕香さん:常温のお弁当開発に配属されて、ターゲットが男性のこともあり、男性ばかりのチームでした。
運がいいことに、ちょうど病院とコラボして弁当を作る企画があって、入社してすぐに管理栄養士だからとやらせてもらえたんです。そもそも商品開発って実際どういう仕事をするのかわからないまま入社していたので、やりながら学ぶことばかりでした。
味付けや盛り付けを何パターンも試して決めて、工場だとできないからこう変えないといけないということがあったり、大量生産するための違う視点を学びました。商品ができてからも、パッケージであったり、商品名であったり、色々と考えることがあって、「商品」の開発は味だけでは決まらないということを感じましたね。
自分で考えた企画が商品化までされたのは、とても嬉しかったですし、全く知らない世界だったので面白い仕事でした。

ーですが、今度はKOMPEITOに転職なさいますよね。それはどうしてだったのですか?

柴崎裕香さん:大きなスケールで仕事がしたいと転職したわけですが、今度は逆に大きすぎて、私の目指すようなことはできないと感じたんです。大量の原料を確保しないといけないとなると、私が使いたかったような、国産だったり添加物の少ない材料を使うことが難しいと感じて、でもこのポリシーを曲げることにも抵抗があったので、なにかできることがあるはずだ、と転職を決めました
商品企画と開発の仕事は好きだったので、規模が小さめで、国産とか、添加物が少ないとか、そういう健康に役立つ商品を開発できる会社を探しました。
KOMPEITOは当時、地方の産直の野菜をオフィスに届けるというサービスを提供していて、地方の生産者さんを助けたいというコンセプトにとても共感したんです。そこで応募してみたところ、ちょうど商品開発の担当者がいなかったので、すんなりと入社できました。

ーそのコンセプトに共感したのはどうしてでしょう。

柴崎裕香さん:地方の生産者さんとか工場って、あまり販売が上手ではないけれど、美味しいものは持っているということが多いんです。そういう眠っているものに、宣伝の仕方や、パッケージの作り方であったりを考えることで、注意を向けてもらえます。そうやって少しでも、美味しくて、こだわってるものが、広がったらいいなと思ったからです。

ー国産や添加物が少ない食材を使うことにこだわるのはどうしてですか?

柴崎裕香さん:初めに働いた保育園がそういう方針だったことは一つだと思います。
あと、出身が群馬県で、実家には畑も田んぼもあって、祖父が育てた野菜や米を食べて育ってきたんです。大学進学を機に東京に出てきて、スーパーで買った野菜がまずすぎて、衝撃を受けたのを今でも覚えています。それがきっかけで、ちゃんと美味しい野菜を広めたいという思いがあるので、国産を使いたいと考えています。

ー規模の大きくない職場を求めての転職でしたが、KOMPEITOでのお仕事はどうでしたか?

柴崎裕香さん:みんながいろんな業務をやっていて、配送する人が足りなかったら、エンジニアさんが配送に行くとか、自分の業務以外の部分もみんなで協力してやらないと会社が回らないってことを感じて、それはそれで楽しかったですね。
商品はサービスの肝だったので、よく社長と一緒に出張に行ったり、商談に出たりしましたが、社長を見ていて、本気でやればできるんだなってことをすごく感じました。
これがやりたいってなった時に、できないかも知れないって思うことって、よくありますよね。でも、まず自分のこれがやりたいっていう思いを相手にきちんと伝えていると、みんなが考えて調整してくれたり、メーカーさんが手伝ってくれたりとかして、形にできることを何度も目にしました。もちろん、企画が失敗したり、商品が売れないこともありましたけどね(笑)

 

栄養士にも子どもたちとの時間を

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ーそこからまた、今のsketchbookに転職なさるんですよね。これはどうしてですか?

柴崎裕香さん:きっかけは、保育園の3年間が本当に楽しかったので、逆に自分が違う業界でしてきた経験を活かして、また保育業界で働けないのかなと考えるようになったことです。でも商品企画の仕事は好きだし、副業で保育園の献立を考える仕事でもしようか、と悩んでいたタイミングで、たまたまbaby’s fun!の社長から電話がありました。baby’s fun!は当時、保育園に子供向けの食事だけを提供していたのですが、職員向けの食事も提供したいという要望があったので、KOMPEITOのサービスを紹介してもいいですか、という相談でした。
それをきっかけにbaby’s fun!のサービスを知って、私のやりたいことにピッタリだと感動したんです。すぐに、お金はいいから手伝えることありませんか、と社長に電話をしました。事業が走り出している以上、きっと自分に合うポジションはないだろうな、と思っていたのですが、ちょうど今までいた管理栄養士さんが抜けてしまうタイミングだったので、献立を作る業務を副業でやっていました。その半年後くらいに会社が設立し直されて、その時に一緒にやらないかという話になって、取締役に入り、その後半年間は2社を掛け持ちで働いて、今はbaby’s fun!にフルコミットしています。

ー今の仕事で楽しいのはどんなときですか?

柴崎裕香さん:2つあって、1つは増えてきたメンバーと、みんなで何か1つのことを考えて、 こういうのできるよねって話してる時はすごく楽しいなって感じます。
もう1つはお客さんから調理作業が簡単になったとか、baby’s fun!は本当にいいサービスです、といったお言葉をいただいた時は、やっててよかったな、やっぱりこのサービス必要だよなって感じますね。

ーサービスを通して、どんな影響を与えたいのでしょう。

柴崎裕香さん:私が保育園で働いて思ったのは、子どもの成長のためには保育士さんとは違った立場の人がいるといいんじゃないかということです。それを担えるのが栄養士さんだと思うんですね。
先生というよりは、給食のおばちゃんとして、友達のような立場で触れ合うことで、子どもたちが安心して食べてみようって気持ちになる環境が作れると思います。でも、現状では栄養士さんにその時間がないんです。私たちの調理作業を軽減できる商品を使うことで、子どもたちとの時間を作ることができたら、保育の環境がより子どもたちにとっていいものになるんじゃないかと思っています。

ー素敵なビジョンですね。柴崎さんが食にまつわる仕事を続けるのはどうしてですか?

柴崎裕香さん:それは私もあまりわからなくて(笑)
自分の保育園の連絡帳を見ると、私は給食が食べれない子だったみたいです。あと咀嚼力がなくて、ずっと口の中でもぐもぐしていました。小学生のころもそんな感じで、中学生になって部活を始めてから、やっと普通に食べられるようになりました。だから人より、食べれることが嬉しいのかも知れません。

ー食という軸はありつつ、様々な方面から関わってきたのはどうしてでしょう?

柴崎裕香さん:たまたま、その時に考える自分がやりたいことをやってきたら、統一感がないキャリアになったんです。きっと管理栄養士だから、と仕事を決めていたら、もう少し綺麗なキャリアにはなったと思いますが、 私は自分がそのタイミングでやりたいってことを実直にやってきました。他にそういう人がいないから、みんなと同じじゃないからこそ重宝されることもあったり、逆にそれが強みになってきたと最近は感じます。
肩書きとか資格って、すごく分かりやすいものではありますが、結局それを見て、私と一緒に仕事したいって人がいるわけではなくて、私の考えや思いを聞いて、一緒に仕事をしてくれるんだと思います。なので、そこで測れない部分が大事だと感じますし、資格や肩書に囚われなくていいのかな、と思います。

ー最後に、柴崎さんが描く食の未来を教えてください。

柴崎裕香さん:最初に働いた保育園の園長先生が、保育園って公平な場所で、それは守らなきゃいけないものなんだよってことをおっしゃっていて、それは本当にそうだと思っています。保育園が、収入格差や家庭の事情に関係なく、平等に健康的な食事が食べられる場所であることが、子どもにとって大事だし、だからこそ安心できる場所になると思うんです。それを崩さないでいければ、未来の子どもたちも、健康に過ごしていけるのかなとは思いますね。

 

***

 

今回は、管理栄養士として様々な職種・業界で経験を積み、今は株式会社sketchbook取締役として働く柴崎さんにお話を伺いました。
肩書きや資格などの自分のもつレッテルではなく、自分のやりたいことを軸に仕事を選んできた柴崎さん。その異色のキャリアがかえってご自身の強みになったそうです。
自分のビジョンをぶれずに持ち、その実現方法を模索するような働き方は、大学生ライターにとって考えさせられるものでした。そんな働き方が、今後増えたらいいですね。
柴崎さんの理想の実現にぴったりな、baby’s fun!サービスの今後が楽しみです!

 

柴崎 裕香さん
しばさき ゆうか|管理栄養士


共立女子大学卒業。管理栄養士を取得。保育園栄養士として、調理や食育に取り組む。
その後、コンビニベンダー・ベンチャー企業の商品開発・商品企画・オペレーションを経験。「国産」「無添加」を広め、子どもの食を豊かにしていきたいと思い、保育園給食の調理業務を効率化し、栄養士をサポートする「baby’s fun!」にてCOOとして活動中。

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