奨学金は経済的に困窮している学生が、主に進学などに役立てるために、支援団体から貸与又は付与してもらうお金のことです。
勉強に対する意欲はあるけど金銭的に心配な人がやる気を無くしてしまわないように、国や自治体だけでなくNPOや民間団体などが各自で制度を作って希望者を募っており、収入源が少ない学生にとっては非常にありがたい制度になっています。
大学に進学する学費の足しや、下宿先の家賃の支払いや生活費にするなど、いろんな理由で奨学金を借りる人は多いと思います。
しかし、この奨学金を返せないと悩む人は後をたちません。
では、奨学金を返せないとどういったリスクがあるのかご存知でしょうか。この記事では、奨学金を返せなくて困ったときの対処法や救済措置などをご紹介します。
もし、この記事を読んでいるあなたが奨学金を返せないで困っているのであれば、この記事を参考にしてみてください。
奨学金を返せない人はどれくらいいる?
奨学金は、経済的な余裕がない学生にとってはとても素晴らしい制度ではありますが、殆どの場合は将来の自分に対する借金でもあるため、奨学金を借りることに対して抵抗を持っている人も多いと思います。
では、日本の学生の中で奨学金を実際に受給しているのはどれくらいの割合なのでしょうか。
日本学生支援機構の「令和2年度 学生生活調査」によると、日本学生支援機構の何らかの奨学金を受給している学生の割合を表したものがこちらです。
これを見ると約半数の大学生または大学院生が奨学金を利用していることがわかります。
学生の二人に一人は奨学金を利用している中で、どれくらいの人数が奨学金を返せないで困っているのかをみていきましょう。同調査によると令和2年度の状況で、
つまり、約30万人以上の奨学金利用者が奨学金を返せない状況にあります。
奨学金を借りている人たちは、大学を卒業するまでと考えても最低4年は奨学金の借り入れを行っているため、おおよそ200万円〜500万円程度の借金を抱えます。
労働福祉中央協議会の「奨学金や教育費負担に関するアンケート調査」によると、日本学生支援機構の奨学金利用者の平均借入総額は324万3,000円です。毎月の返済額は平均1万6,880円、返済期間の平均14. 7年という調査結果が出ています。大学を卒業して、大半の人は就職をして、そこから結婚して家庭を持つ方も多いです。生活環境が変化していく中で、月々の奨学金の返済が生活を圧迫していると言っても過言ではありません。
次に、奨学金を返せないと答えた人が上げた理由をみていきましょう。
「令和2年度奨学金の返還者に関する属性調査結果」によると奨学金を返せないと答えた人の理由の中で一番多かった回答が「本人の低所得」で62.9%、次いで「奨学金の延滞額の増加」が41.4%でした。
近年の不景気によって、収入がなかなか上がらないこと、そもそもの収入が少ないことが奨学金返済にお金を当てられない大きな原因でした。
参考:
令和2年度学生生活調査結果
https://www.jasso.go.jp/statistics/gakusei_chosa/__icsFiles/afieldfile/2022/03/16/data20_all.pdf
令和2年度奨学金の返還者に関する属性調査結果
https://www.jasso.go.jp/statistics/shogakukin_henkan_zokusei/__icsFiles/afieldfile/2022/07/21/r2zokuseichosa_shosai.pdf
奨学金や教育負担に関するアンケート調査
http://www.rofuku.net/CMS/wp-content/uploads/2019/03/b91ff18c02e840ae68b0adeec67790c8.pdf
奨学金を返せないときに発生するリスク
実際に奨学金を返せないで困っている人がたくさんいることがわかりましたが、奨学金の返済を延滞してしまうとどのようなリスクが発生するのでしょうか。
返せないときのリスク ①延滞金が発生する!
奨学金の返済は、自分で決めた口座から毎月引き落とされる形で始まります。口座の残高不足で引き落としができなかった場合、ペナルティとして年率3%の延滞金が加算される仕組みになっています。ただ、引き落とし予定日に口座に入金がなくて引き落としができなくても、翌月の引き落とし予定日までに先月分と当月返済分を入金して返済すれば延滞金は発生しません。
数ヶ月間返済を滞納してしまい延滞金が発生してしまった場合、翌月の引き落としの際に「延滞金」+「前月未返済金」+「当月返済金」の合計額が引き落とされます。延滞金の3%は年率での換算なので1ヶ月程度の滞納であれば、延滞金はそんなに大きな額にはなりませんが、元本2ヶ月分の返済が求められるため注意が必要です。
返せないときのリスク ②3ヶ月の滞納でブラックリスト入り
延滞金ももちろんリスクではあるのですが、それ以上に注意しなければならないのはブラックリストに登録されてしまうことです。
3ヶ月分の滞納をしてしまうと「個人信用情報機関」に個人情報(滞納者の名前、生年月日、電話番号、勤務先等の情報)が登録されます。これを一般的に「ブラックリスト」入りといいます。
では、ブラックリストに登録されるとどんなリスクが生じるのでしょうか。
個人信用情報機関は、銀行やクレジットカード会社などに個人の経済的な信用情報を提供している機関です。そのため、銀行やクレジットカード会社は、個人からお金を借りる際やクレジットカードを作る際などに、個人信用情報機関に個人情報を照会して、個人が経済的に信用できるかを審査しています。
そのため、発生するリスクとしては、
つまりは「新規のお金の借り入れ」ができなくなります。個人信用情報機関に登録されてしまうと社会生活を送る上で不自由が生じます。
延滞金も含めた返済額をすべて返すことができれば、「延滞解消」として個人信用情報機関の登録の情報更新はできますが、滞納経験者として与信判断をするのはカード会社や金融機関であり、ブラックリスト登録はすべての返済が終わったとしても、最低でも5年は継続して登録されてしまいます。これは今後の社会生活を送る上でとても大きなリスクだと考える必要があります。
返せないときのリスク ③法的対処を取られる可能性!
9ヶ月間の長期の滞納が続いてしまった場合、更に厳しい処置が取られます。
もともとの借入金と、延滞金を含めたすべてを一括で返済が求められ、裁判所に訴えられます。こうなってしまった場合は、毎月数万程度の支払いだったものが、一気に数百万になってしまうため支払うことは非常に困難になります。
また、親や知人などに「人的保証制度」を使って連帯保証人又は保証人になってもらっている場合は、2ヶ月分の奨学金を滞納すると、債権者や債権回収業者から両親や親族に対しても請求が行く可能性もあります。
他にも給料や財産を差し押さえられる強制執行も起こりますので、できる限り長期的な滞納は避けましょう。
奨学金を返せないで困ったときの救済措置
日本学生支援機構では、返済額を一部減額したり、返済を待ってくれたりするなどの救済措置を利用することができます。
救済措置にはそれぞれに条件がありますのでしっかりと調べた上で利用しましょう。
返せないときの救済処置 ①月々の返済額を少なくする(減額返済制度)
減額返済制度を利用すると毎月の返済額を減額して返すことができます。月々の返済額を「2分の1」か「3分の1」で選択することができます。「2分の1」を選んだ場合は返還期間が2倍、「3分の1」を選んだ場合は返還期間が3倍になるといった計算になります。
対象は、災害、病気、その他経済的理由により奨学金の返済が困難な方の中で、当初の月々の返済予定額から減額すれば返済できるという方を対象にしています。
減額返済適用期間に応じた分の返済期間を延長して、毎月の返済額を減額するため、無理なく返済を続ける事ができます。また、減額したからといって延滞金が加算されるわけでもないので、今の生活に困っている方は積極的に利用してみるといいでしょう。
1年ごとの申請で、最長15年間まで延長することができますので、全額は返せないけど、月々の支払い額が下がれば払えるといった方にはおすすめです。
返せないときの救済処置 ②返済を待ってもらう(返済期限猶予)
返還期限猶予制度は月々の返済を先延ばしにしてもらえる制度です。
こちらの申請も1年ごとにおこない、審査を通過して申請が通れば、原則通算10年間は返済を先延ばしにすることができます。こちらも減額制度同様に延滞金は加算されません。
災害、病気、経済的理由や失業などの返済困難な事情ができた場合は、返せないで延滞してしまう前にすぐに手続きを行いましょう。
先延ばしの期間が終わった後に返済が再開され、それに応じて返済終了年月も延期されます。
ただし、この制度は猶予ができるだけであって、返済すべき元本や利子が免除されるものではありません。将来的な負担は変わらないので、少しでも返済できる余裕がある場合は減額返済制度を使うことをおすすめします。
奨学金の返済が免除になるケース
また、稀有な事例ではありますが奨学金の返済が免除になるケースも存在しますので紹介します。
免除になるケース ①本人が死亡したとき
「貸与奨学金返還免除願または給付奨学金返還免除願」と「本人死亡の事実を記載した戸籍抄本または個人事項証明または住民票等の公的証明書」を日本学生支援機構に送付する必要があります。
一旦、日本学生支援機構に相談することにはなりますが以下のケースに当てはまる場合は未返済の金額の全て、もしくは一部が免除になります。
免除になるケース ②精神もしくは身体の障害による免除のとき
日本学生支援機構と担当主治医と相談の上、症状の回復の見込みがなく、労働能力がなくなった場合または高度の制限を有する事態となった場合に、奨学金の免除を願い出ることができます。ただし、貸与中及び在学中の場合は申請はできません。
申請する際は、「奨学金返還免除願」と「診断書」を提出します。
返済に困った際の最終手段
これまで奨学金を返せないときの手段として返済猶予制度や、減額返済制度を紹介しましたが、これらを利用しても返せないという場合は法的な最終手段を使うしかありません。
方法としては「任意整理」、「個人再生」、「自己破産」の3つのやり方があります。
ただし、どれを選択しても個人信用情報機関に登録されてしまうデメリットはありますが、どうしても返せないで悩んでいる場合は利用した方が良いかも知れません。
どの選択肢を選ぶのが最適なのかは、個人の希望や置かれている状況等によって異なります。これらを利用するか検討する際は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
返せないときの最終手段 ①任意整理
任意整理とはお金を借りている側と貸している側が、利息の軽減などのために交渉することです。
どの貸金業者もですが、一定期間支払いが滞った方には支払い催促の電話がかかってきたりしますが、弁護士や認定司法書士に依頼すると、直接金融機関から催促が来ることは止まります。
奨学金以外にも借金がある場合は、奨学金以外の借金を整理することで、支払いの負担額を減らせることができるので、奨学金を問題なく返済できるようになるかもしれません。
奨学金以外の借金があり、そちらの借金も返せないで困っている人にはおすすめです。
返せないときの最終手段 ②個人再生
個人再生は、裁判所に再生計画の認可決定を受け、借金を最大10分の1まで減額してもらう手続きのことです。減額された借金を目安3年かけて支払うことで、残りの借金については、支払い義務が無くなります。
例えば、600万円の借金がある人が、個人再生をした場合、借金は5分の1に減額されるため、借金額は120万円となり、3年で支払うとしても月々の支払いは約3万円まで減額することができます。
*負債額が500万円以上1500万円未満の場合は、負債額の5分の1
個人再生の特徴としては生命保険や車などの資産を持ったまま手続きができることです。
任意整理では支払えないような多額の借金を持っている方や持ち家など処分したくない財産を持っている場合はおすすめです。
返せないときの最終手段 ③自己破産
自己破産とは、裁判所に「破産申立書」を提出して「免責許可」を貰えれば、すべての借金の支払い義務が無くすことのできる手続きのことです。
自己破産ができるのは「支払い不能」という状態になった場合です。支払い不能というのは、現在持っている資産や今後入ってくるお金などを総合的に判断しても、すべての債務を支払いきれないと考えられる状態のことです。
自己破産はあくまでも最終手段であり簡単に選択すべきではありません。自己破産をしたとしても裁判所が「借金の返済が不可能である」と認めなければ借金が0にはならないからです。
任意整理や個人再生も適わない状況であるときに自己破産を選択しましょう。
ただし、自己破産を行えない職業(保険外交員、警備員)などもあるので注意が必要です。
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奨学金を返せないで悩んでいる人はとても多く、この問題は社会的にも注目度が高くなっています。現在で合計900億円以上の滞納金があり、いつそれを国民の税金で補うかわからない状況が続いています。最悪の場合、奨学金制度自体がなくなってしまう可能性もあります。
たとえ奨学金を返せないで悩んでいても、命までなくなるわけではないです。利用できる制度や、救済措置はたくさんあるので、まずはそれらを利用できるか調べてみましょう。
そして、利用できる制度は必ず利用しましょう。それが、あなたの人生を変えてくれるきっかけになるかもしれません。
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