「ピアボーナス制度」というものを知っていますか?
ピアボーナス制度はアメリカ発祥の新しい評価の仕組みであり、社員の働くモチベーションを高め、コミュニケーションを促し、そして社内を少しほっこりさせられるシステムです。
すでに日本でもピアボーナス制度を導入している企業は存在していますし、導入している企業数も年々増加しています。
ボーナスと聞いたら少しワクワクしますよね。
では、早速気になるピアボーナス制度について見ていきましょう!
ピアボーナスとは?
Google社がすでに導入していることで知られる「ピアボーナス制度」は、「仲間(peer)」と、「報酬(bonus)」を組み合わせた言葉で、本来会社からもらうはずの報酬を、社員同士で贈り合うことができるという仕組みです。
例えば、縁の下の力持ちのようなスタッフや、普段あまり関わることのない部署の人から協力してもらったときに、些細な報酬として、ピアボーナスを贈ります。
評価の対象は、日々の職場における助け合いや良い行動などです。
みんながやりたがらないトイレ掃除や、ゴミをまとめたり、作業を手伝ったりなどそんな小さな助け合いをお互いで評価していく制度です。
社員同士がお互いに評価をしあうことで、ピアボーナスを贈った・贈られたタイミングでコミュニケーションの機会が生まれます。そこから、普段あまり関わらないメンバー同士で会話が生まれたりすることで、社内全体が盛り上がって行ったり、結果的に離職率の減少にもつながると言われています。
ピアボーナス制度の導入のメリット、デメリット
Google社で導入されたピアボーナス制度は、国内でも徐々に導入企業が増え始めています。
上司が部下を評価する従来の評価制度では無くて、従業員同士がお互いを平等に評価する制度であることが大きな特徴で、新しい人事評価制度や報酬制度としても注目されています。
では、実際にピアボーナスを導入するメリットはどんなものなのでしょうか。
社内でのコミュニケーションの機会の増加
会社への帰属意識の向上
離職率の低下
では、早速ピアボーナス制度の導入のメリットを紹介していきます。
社内でのコミュニケーションの機会の増加
先ほども少し触れましたが、感謝や賞賛を相手に伝える時にはコミュニケーションの機会が必然的に生まれます。
また、気軽にお互いを褒めやすい雰囲気が社内でできていれば、自分の所属している部署だけで無く、今まで交流がなかった他部署の人ともコミュニケーションを計りやすくなります。
ピアボーナス制度を通して、お互いの仕事や役割に興味関心を持つことで、社内でのコミュニケーションが活性化されます。
そして、従業員同士がお互いに褒め合い、尊重する文化ができていれば、明るい組織風土になることにも繋がります。
会社への愛着心の向上
一般的に、従業員の会社への愛着心が高い企業は優秀な業績を残し、愛着心が高い従業員は優秀な成績を残すという傾向があります。
そのため、企業の取り組みとして会社に対して愛着心を高める施策を行わなければなりません。
例えば、ピアボーナス制度を導入すれば、評価の権限の一部を授業員に任せることになるので、経営層への信頼や仕事への意欲の向上が考えられます。
また、自分の仕事や取り組みを職場の仲間から評価され、賞賛されるので、仕事に対するモチベーションも向上します。その結果、会社に対する愛着心の向上にも繋がります。
大きな仕事の部分だけで無く、日々の小さな行動を褒められた方が嬉しいですし、他の仲間に対しても興味関心が湧いてきます。
離職率の低下
従来の評価制度では、上司が実際に目で見て判断したものが大きな指標となっていました。
つまり、数字では表せない部分の成果や、業績に直接影響しない取り組みなどは評価されにくかったのです。
しかし、ピアボーナス制度を導入すれば、普段なかなか表面化しない定性的な成果も評価されやすくなります。
このように、仕事による成果を漏れなく評価してくれる環境ができれば、従業員の満足度に繋がり、結果的に離職率の低下に繋がります。
制度の導入コストがかかる
ピアボーナスで評価を得ることを目標にする従業員が現れる可能性
組織としてうまくいかなくなる可能性
魅力的なピアボーナス制度にもデメリットは存在します。では、紹介していきましょう。
制度の導入コストがかかる
ピアボーナス制度を導入する際に、外部のピアボーナス専用のサービスなどを用いれば、初期費用や、サービス利用料などの費用は必ずかかってきます。
また、ピアボーナスの報酬を現金として支給するのであれば、その報酬にかかるお金も給与以外に確保しなければなりません。
ピアボーナスで評価を得ることを目標にする従業員が現れる可能性
先ほども述べたとおり、ピアボーナス制度を導入すれば正規の給与以外にも経済的な利益を得ることができますが、それに固執して多くの利益を得ようと本来やるべき業務ではないことをしたり、目に見えて評価されやすい仕事に夢中になってしまう社員が現れる可能性はあります。
組織としてうまくいかなくなる可能性
社員が、「評価してあげよう」「評価されたい」というやりとりに夢中になってしまい、本来やるべきはずの業務が疎かになってしまうケースもあります。
結果的に内部のことばかりに目を向けている会社は組織としてはうまくいきません。しっかりと評価の軸を考えながら運用していきましょう。
ピアボーナス制度を導入している企業の実例
ピアボーナスを実際に導入している企業はGoogleをはじめ、日本企業でも増えてきています。
実際に、導入している企業の事例を紹介していきましょう。
株式会社メルカリ
株式会社LIG
Googleがピアボーナス制度を導入したきっかけは、強いチームを作るためでした。Googleではチームを強くするために必要なのは、「心理的安全性の高さ」とProject Aristotleの中で述べています。
強いチームにおける心理的安全性とは、チーム内で自分をさらけ出しても、他の人から批判されなかったり、自分が思ったことを思ったままに発言できる環境が整っていることをいいます。
従業員同士がピアボーナスを送り合うことで、心理的安全性を高めることに繋げています。
Googleが行っているピアボーナス制度は、約2万円程度の現金を、自分の上司や部下以外の他のチームのメンバーに送ることです。
同じ人に対しては6ヶ月間送ることができないような仕組みもあったり、送付するに当たって上司の承認が必要であったりするように仕組みが整えられています。
その結果、裏方職種の成果・評価を可視化、モチベーション低下の防止、多面的な評価の実現にも繋がりました。
株式会社メルカリ
メルカリでは、もともと四半期ごとにお互いを賞賛し合う文化がありました。しかし、四半期ごとではなくてリアルタイムにお互いを賞賛できる仕組みを取り入れようとピアボーナス制度を導入しました。また、導入されたピアボーナス制度では今後海外に事業展開していく際に増えていく授業員の顔と名前を一致させるという効果も期待されていました。
メルカリが導入しているピアボーナス制度は「メルチップ」という名称で運用されており、従業員同士がすでに使用しているSlack上で互いに送り合うことができます。このメルチップはインセンティブとして記録され、経済的な利益をもらえます。
その結果、従業員エンゲージメントの向上、自社のクレドを日々発信、体現、マネージャー陣のフィードバックの実現にも繋がりました。
株式会社LIG
WEB製作ノウハウを起点に幅広いDX事業を展開している株式会社LIGには、デザイナーやクリエイターなど数字では表せない成果を作っている従業員も多いので、数字で測れない部分の会社への貢献度を可視化して、社員に還元するためにピアボーナス制度を導入しました。
授賞式で表彰されたり、イベントなどに登壇した社員などに「LIGコイン」が付与されます。また、オウンドメディアであるLIGブログに期日内入稿できると、LIGコインが付与されます。正当な理由なく期日を過ぎてしまうと、LIGコインが没収されてしまい、マイナス評価になります。正当に働いている社員がしっかりと評価されて、いい加減な仕事をしている社員は評価に影響するといった仕組みが作られているのだとか。
それにより、ブログの更新頻度が上がったり、社員のモチベーションのアップに繋がりました。
(数年前に社内制度の変革に伴い、「LIGコイン制度」は廃止されています。本記事内では、実例を提示する趣旨のもとご紹介させていただきました)
ユニークなピアボーナス制度を提供しているサービス
「Hey Taco!」というアメリカのスタートアップ企業では、従業員同士で感謝を表す際にSlack上で「タコス」というボーナスを、メッセージと主に送り合うことができるサービスを提供しています。
Hey Taco!は一般的なピアボーナス制度と違い、送られてきた「タコス」を現金としてではなく、ご褒美として受け取れれます。
例えば、75個タコスを集めたら有給休暇取得、120個タコスを集めたら社長とディナーみたいに企業独自にご褒美を設定することができます。1日に贈れるタコスは1人5個までで、今までにもらったタコスの数はWEB上で確認することができます。
また、導入にかかるコストは、社員1人あたり1ヶ月で約2ドルと、初期費用も安く抑えることができます。
まとめ
ピアボーナス制度は、従業員同士で気軽に贈り合えるボーナスのことです。
ピアボーナス制度を導入することで、従業員同士で賞賛しあう文化を作り、会社の雰囲気をポジティブにすることができます。
それにより、コミュニケーションの活性化や、仕事の評価への納得感の向上、社員の仕事に対するモチベーションの向上などのメリットも受けることができます。
今回紹介した、ピアボーナス制度のメリット・デメリットをしっかりと理解した上で、実際の運用に役立てていきましょう。