今回は、shabellbaseを飛び出して、昨年11月に実施した親子向けのキャリアセミナーの内容を皆さんにシェアしようと思います。
セミナーを開催したのは以前shabellbaseでも紹介した、マギーさんが移住した長野県下伊那郡にある人口900人ほどの根羽村。
根羽村は面積の92%が森林で、村の全世帯が森林所有者であり、かつ森林組合員という特別な地域です。
また人口900人に対し、未成人の人口は50名弱と自然や村の人々と子どもたちが触れ合う姿が、日常の風景としてあふれているのも特徴です。
1つ前の記事では、マギーさんのキャリアを思う存分掘り下げさせていただきました。今回は、マギーさんが移住を決意した『根羽村』の魅力をお伝えしていきます! また、マギーさんの「人となり」をもっと知りたい方は、こちら[…]
家庭教育についてをテーマにしたきっかけ
マギーさんと私は、かつて一緒にプロジェクトメンバーとしてお仕事したご縁で、他のプロジェクトメンバーも含めて定期的に交流する間柄です。
10月たまたま私用で上京していたマギーさんと、いつものように仲間たちとお茶を飲みながら話している中で、子育ての話題になりました。
いわゆる教育というものの中には、学校教育と家庭教育というものがあります。
学校教育は国が教育制度の中で、計画に則って全国の学校において一律で実施され、国語・算数・理科・社会などの科目だけでなく、集団生活の中で社会性などを育むことを目的としています。
一方、家庭教育というのは、生活習慣や家族との関係性の中で基本的な価値観を養ったり、自分との向き合い方や認め方を築いていくものです。
この時に私が話題に挙げたヘレン的家庭教育の重要ポイントは、親子間の会話における「問い」の立て方です。
さて、「問い」の立て方とはなんのことなのか。
実際に根羽村で開催したセミナーに沿って紹介しようと思います。
根羽村のおとなとこどもとヘレン
11月のある土曜日、村のイベントでは焼き芋が振る舞われていました。
村の皆さんとの出会いの瞬間に、少しドキドキして待っていると、主催の皆さんから焼き芋をお裾分け頂きました。
緊張しているというにも関わらず、焼き芋に水分を奪われ喉を詰まらせながら参加者を待っていると、スクリーンに映し出されたのはなんとも恐れ多いタイトル。
偉くハードルが上がっている様子に、さらに緊張を掻き立てられ、大急ぎで喉に詰まった焼き芋をお茶で流し込みました。
ちなみに、この焼き芋はとても素朴で、子どもの頃に落ち葉を集めて焼いていた味のようでした。
今のとても甘い焼き芋も素敵ですが、思い出と一緒に味わう飾らない味わいは何にも変え難いものだなと心がホワッとあたたかくなりました。
問いを立てることで得られること
そうこうしているうちに、続々と参加者のみなさんが集まってくださいました。
主催のみなさんに事前にこちらからお願いしていた条件は、「親子」でご参加いただくこと。
実際に来てくださった参加者は全部で8世帯。小学校中高学年の私と親御さんは私と同世代がほとんどでした。
会場では、親と子それぞれ離れて座っていただき、8通り親と子と共に、それぞれの家庭教育について考えるセミナーがスタートしました。
まず講師である私、ヘレンについての簡単な自己紹介から始め、私が子育てのプロではなく”おとな育て”のプロ(社会人教育)であることに触れました。
その上で、今回のセミナーは私が参加者のみなさんに何かを教える機会ではなく、
おとな育ての観点から、子ども時代にどんな経験や大人関わりが必要なのかを一緒に考える
ことが目的であることを、最初に説明し、さっそく問いを立てました。
ヘレンからの問いその1:「働くって?」
私から投げかけた問いの1つ目は、
「働くってどういうことなのか自分の言葉で説明しましょう」
というものです。
子どももおとなも誰とも相談せず、言葉だけでも、図式にしても、絵を描いても良いので、とにかく自分の頭で考えて人に説明できる状態を目指してもらいました。
しばらくそれぞれ考えたのち、まずは子どもたちに発表してもらい、その後におとなたちに発表してもらう流れで進行しました。
ヘレンからの問いその2:「仕事って?」
次に、働くということに似ているキーワードとして、「仕事とは何か?」という問いを投げかけました。
仕事と働くは、似ているようで実は違うことについては、おとなも子どもも同意してくれているようでした。
1つ目の問いと同じように、しばらく時間を与えて、自分の頭で考え自分が説明しやすい方法で整理してもらいます。
そしてまた、子どもたちから発表し、それに続いておとなたちが発表するという流れで進行します。
実はこの2回の問いによって、大変興味深いことがたくさん起こりました。
起こった現象は以下の通りです。
子どもから学ぶことが先である
ここまでの2つの問いとそれに対する回答、そして子どもとおとなの回答の差から得られたことは何か、ズバリおとなたちに尋ねてみました。
「我が子がこんなにも闊達に自分の意見を述べることができるなんてびっくりした」
「自分達おとなよりも、子どもたちの回答の方がよっぽどしっかり考えられていた」
「大人は頭が堅いな、当たり前に使っている言葉なのに、いざ説明すると思うと難しいことの方が多かった」
「普段の生活の中で会話する機会がないことばっかりだったが、子どもが自分の考えを持っていることを知れてよかった」
おとなは自分達の知識や知恵を与えることで、子どもを育てるのが役割である。
この場にいたおとなたちだけでなく、多くの人がそう思っているのではないかと思います。
もちろん、乳幼児期において、命や身の危険を回避させるための情報や知識を与えることは重要ですし、保護することも大切な役割です。
しかしながら、それ以外の多くの事柄については実はおとなが気づかないだけで、自分達なりの考えや価値観を既に子どもたちがもっていることが思った以上にあるのです。
家庭教育において、私が一番大切にしてほしいと伝えたのが
子どもの考えを聞くこと、価値観を知ること、そして先回りしないこと
です。
その上で、必要な情報は何か、必要な経験は何かを考える。
答えを与えるのではなく、子どもと一緒に考え学ぶ機会を作ることに一生懸命になること。
それが家庭教育においては大切なのではないかと思うのです。
おとなは子どもが大きくなった人
このセミナーでは、親と子をおとなと子どもという役割に分けて議論してもらいました。
その上で、私から最後に問いかけたのは、
ヘレンからの問いその3:「オトナってなんなのか?」
こどもたちには、それまでの問いと同じように自分の言葉で”オトナ”について、考えて説明してもらいました。
一方、おとな達には”自分が自分自身を『オトナである』と自覚したのは、いつ・何をもってなのか、という観点で考えてもらいました。
結論から言うと、既におとなである自分達には、
オトナであると自覚する側面とまだオトナではないと自覚する側面がある
ということでした。
すなわち、大人は字の如く、ただ大きくなった(年を重ねた)という場合の方が多いのです。
充分な経験を積んで親になった人の方が少なく、人間として全く未熟な状態で「親という役割になってしまう」人の方がほとんど。
加えて、子を育てることにずっと関わる時間というのも、実はとても短く、子育て以外のことをしている人生の方がうんと長いのです。
つまり、親は子に充分な何かを与えるだけのものを持ってはいないことの方が普通なのではないか。
先回りしてどんどん答えだと自分が思っていることを与えちゃった方が親っぽいし、その方が成長が早そうな気がするのですが、自分で考えられる力はみんな持っていることを信じて、考える機会を奪わないことの方が本当は大事なのではないか。
むしろ、子どもの考えの変化を観察する方が、子が育つ過程をうんと楽しめるんじゃないだろうか。
そんな私なりの考えを皆さんに共有しました。
だから、子どもと一緒に学ぶ時間を家庭でどう作るか、共に問いに向き合うことを日々どう行うかが重要なのではないか。
根羽村のみなさんと一緒に作った学び
子どものいない親でもない私が、親子のこと、子育てのことについてセミナーを開催したり、相談に乗ることに抵抗がないと言えば嘘になります。
ただ、私はこれまで長い間、多くの人が大人になる過程に携わって来ました。
その中で、大人になる過程において、親を中心とした子が育つ環境が与える影響の大きさや、それを大人として社会に出た後に変える難しさにたくさん触れてきました。
だからこそ、伝えられることや支えられるものがあるのではないかと思っています。
今回のセミナーは、根羽村の皆さんの人柄や繋がりによって実現しました。
本当に感謝しかありません。
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- Helen(ヘレン)さん
キャリア・人事コンサルタント1982年秋田県生まれ青森県育ち
理工系大学修士号取得後、ベンチャー企業に新卒で入社し、人事の立ち上げから採用・育成の責任者を務める。人材ビジネスにおいても営業統括として従事し、就活・人事のプロフェッショナルとして、2016年に独立。キャリアセミナーや人材育成が得意領域。
2022年より株式会社shabell 取締役COO就任。