「家事は女性がするもの」「家事の負担は女性が高くて当たり前」
近年は女性は家事、男性は仕事というような価値観は、働き方改革や時代の変化に伴い薄れてきています。
また、専業主婦世帯数が減少傾向にある中、共働き世帯数は年々増加しています。なので、現在は夫婦共働きという家庭は全く珍しくありません。
これからはお互いに思いやりを持ちながら夫婦で一緒に家事を分担し、協力していくことが求められる時代になってきています。
しかし、日本での現状は他の諸外国と比べても、共働き世帯で夫婦間の家事の分担がうまくいってないことが多く、どうしても女性の方が家事の負担が大きくなってしまっています。その原因はどこにあるんでしょうか。
本記事では、共働き世帯が家事を分担しようとする際に生じる問題点や課題点を分析していきます。そして、家事における男女の考え方の違いや、家事分担することにより家庭に与える影響などを紹介しています。
また、この記事では共働き世帯が円満に家事を分担できるコツも紹介しますので、ぜひそれらのコツをもとに家事の分担を提案してみてはいかがでしょうか。
共働きの現状分析
まず最初に共働き世帯における家事分担の現状について調べていきましょう。
「男女共同参加白書 令和4年版(2022年版)」によると年々「男女雇用者である無業の妻からなる世帯」である「専業主婦世帯」の数が減少し、「共働き世帯」の数が増加していることがわかります。
また、令和3年では「共働き世帯」は1,177万世帯、「専業主婦世帯」は458万世帯とすでに700万世帯以上の差がついています。
しかし、日本の夫婦における1日の中で「日常の家事」などを含めた無償労働の時間の割合を表したグラフでは、妻が約220分なのに対し、夫は約40分しかありません。他の国と比較してみても、アメリカ、スウェーデンで約180分、ドイツで150分程度は1日の中で無償労働を行っているというデータがあります。これは、世界各国と比べても日本の夫が家事などに時間を費やす時間は圧倒的に少ないという結果を示しています。
参考:「男女共同参加白書 令和4年版(2022年版)」
https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r04/zentai/pdf/r04_tokusyu.pdf
では、1日の中でやるべき家事にはどんなものがあるでしょうか。
家事を共働き夫婦の中で分担していく上でまず考えたいのは、分担していく作業内容です。
家事の内容は大きく分けて「炊事」「洗濯」「掃除」と分けることができます。
また、ここにお子さまがいる場合だと更に「子育て」が入ります。
家事は毎日行わければならないものと思いがちですが、意外にも毎日やらなければいけない家事は少ないことがわかります。では、どんなものがあるか見ていきましょう。
炊事
・献立を考える
・食材を買いに行く
・食材を料理する
・食器などの片付け
洗濯
・洗濯をする
・洗濯物を干す
・乾いた洗濯物を取り入れる
・洗濯物をたたむ、収納する
掃除
・床掃除をする
・お風呂、トイレなどの掃除をする
・ゴミを出す
共働き世帯の場合、夫婦間で協力しながら家事を分担することが求められます。妻や、夫のどちらか一方に家事を依存してしまうと負担が大きくなってしまいます。
大和ハウスが行った「共働き夫婦の「家事」に関する意識調査」によると、
共働き世帯に家庭での家事負担の割合を聞いたところ、妻の認識では、「夫1割:妻9割」(37.3%)がトップで、他の回答と合わせても妻の88.6%が「自分の家事負担が7割以上」という認識の結果になりました。
また、夫を含めた全体でも、80.9%が「妻の家事負担が7割以上」と回答しており、共働きにもかかわらず、圧倒的に妻の家事負担が多いことがわかりました。
夫の回答でも妻の家事負担の方が多いという結果でしたが、夫の1位は「夫3割:妻7割」(27.0%)で、妻が思っているよりも「自分はやってる」と思う夫が多く、共働き夫婦の間でも大きな意識のギャップがありました。つまり、夫側のやっているつもりという認識が見て取れます。
参考:「共働き夫婦の「家事」に関する意識調査」
https://www.daiwahouse.co.jp/tryie/column/build/dual_income/index.html#anc0
このギャップを埋めていくためにもお互いに満足する分担率をお互いで話し合いながら、共働き夫婦の間で分担の作業内容を話し合っていく必要があります。
近年の世の中の風潮としては、共働き世帯でも男性が家事や育児に積極的な参加を推進するようになっています。
企業もワーク・ライフ・バランスについての施策を始め、今までは女性の取得がメインだった育児休暇も、男性が取得しやすいように促す取り組みも増え、厚生労働省の調査によると、男性の育児休暇取得率は9年連続で上昇し、2021年度は過去最高を記録しました。
また、コロナ禍の影響もありリモートワークが推進され、家庭にいる時間が増えたため男性も育児や家事をしながら、仕事をするといったケースも増えてきています。時代に合わせた柔軟な働き方が増えてきています。
今や共働き世帯が増えたことにより、男性が家事や育児に参加していくことは当たり前になってきています。現状ではまだまだ女性側の負担が大きいものの、男性側にも「家事を分担したい」というような意識があることがわかります。
しかし、お互いに家事を助け合いたいと思っているにも関わらず、家事の分担がうまくいかないケースがあります。
次の章ではその事例を見ていきましょう。
参考:令和3年度雇用均等基本調査
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-r03/03.pdf
共働き夫婦の考え方の違い
共働き夫婦の家事を分担していく上で、気持ちよく家事を分担できない理由は何なのでしょうか。また、どんなことに注意していけばよいのでしょう。
まずは男女別に「どこに不満があり、どうしてほしいのか」を理解することができれば解決策のヒントをつかめるかもしれません。
女性側の意見
・家事を言わないとやってくれない
・家事を手伝うものだと思ってない
・家事のクオリティが気になってしまう
男性側の意見
・何を手伝えばいいのかわからない
・自分の家事に対して小言を言われる
・仕事で疲れているからそこまで手が回らない
家事の分担をパートナーと協力していくことで、不満やストレスは軽減することができます。
ですが、いくらパートナーといっても育ち方はお互い違うので、価値観や思考も異なりコミュニケーションが無いと、気が付かないうちに亀裂が生まれてしまうかもしれません。
夫婦だからわかりあえていると思わずに、お互い共働きで忙しいかもしれませんが、時間を確保して家事の分担について積極的にコミュニケーションを取ることが大切です。
内閣府の男女共同参画局では共働き夫婦が仲良く暮らして行くための夫婦協力体制を作るサポートをする「夫婦が本音で話せる魔法のシート」を配布しています。これを活用して共働き夫婦の間で家事や育児をどのように分担していくか話し合いをしてみてはいかがでしょうか。
参考:「夫婦が本音で話せる魔法のシート」
https://www.gender.go.jp/public/sakusenkaigi/index.html
共働き世帯の家事分担のコツ
共働き夫婦が家事を上手に分担することは、お互いのストレスも減らし、円満な夫婦関係を作ることに繋がります。では、家事を分担していく上でどのようなことを意識していけばよいのでしょうか。
共働き世帯の家事分担のコツ ①得意なことは得意な人がやる
夫婦の間でも得意な家事はお互いに違うはずです。料理が得意な場合や、掃除が得意な場合など、自分は何の家事が得意なのかをお互いに話し合ってみましょう。
お互い得意な家事を行うことで、一つ一つの細かいストレスを減らすことができます。また、得意な人が得意な家事をやるほうが効率も上がります。お互いに苦手な家事の場合は隔週で分担するなど工夫しながら行ってみるのもいいかもしれません。
共働き世帯の家事分担のコツ ②家事の一部を相手に任せる
一つの家事業務に対して一人で取り組むのではなく、家事内容を細分化して一部を相手に任せてみましょう。
例えば「洗濯」の場合、洗うのは妻が担当、そして洗い終わった洗濯物を干すのは夫が担当、取り込んで片付けるまでは二人で行うなど、家事を一人で全て行うのではなく、細分化して手分けすることにより負担を減らすことができます。手伝ってもらえるだけでも気持ちの負担は軽くなります。
共働き世帯の家事分担のコツ ③動きやすい時間帯を意識する
家事の中でも時間帯が決まっているものがあります。例えば、朝のゴミ出しや夕方の食事作りなどはお互いの生活時間を相談しながら決定するのがいいでしょう。
朝は出勤などで活動時間が早いほうがゴミを捨てる、夕方は早く家に帰ってくるほうが夕食を作るなどの時間帯で家事を分担することで、臨機応変に対応することができます。共働きでお互いの行動時間が違う場合はうまく活用しましょう。
また、時間帯があまり関係ない家事は、時間の都合がつけづらい人が担当するといいかもしれません。
共働き世帯の家事分担のコツ ④相手に対して感謝を伝える
家事は日常生活の一部なので、感謝の気持ちが薄れてしまうかもしれませんが、家事をやってもらうということは当たり前ではありません。共働き世帯はお互いに働いているので、疲れているし、忙しい中で家事をこなしてくれているのです。
無償で家事をやってくれている相手に対して感謝の言葉を伝えることは大切なことです。相手がしてくれたことに気づくことは、小さいようで大きなことなのです。感謝されて嫌な人はいないはずです。
しかし、これらのコツを守ってうまく家事を分担できたとしても、突然の残業や出張、飲み会などで家事の分担が決まっていても、自分の担当を相手にお願いしなければならないケースがでてくることもあると思います。
仕方ないでしょというような姿勢で相手にやってもらうのではなく、感謝の気持をもってお願いすることが大切です。頼み方も気をつけなければトラブルにもなりかねないかもしれません。
そして、もし相手がやってくれた家事に対して、自分とやり方が違ったりして不満を持ったりしても、絶対に否定をしてはいけません。否定をされた側は、自分の家事が無駄だったという気持ちになるでしょう。
もちろん、相手にやってもらったら、今度は自分が手伝えるタイミングで相手の家事を手伝いましょう。そうすることでお互いに何か合ったときに頼みやすい習慣ができます。
家事を分担することで起こるメリット
家事の分担を共働き夫婦間で協力していくことで、不満やストレスが軽減され良い効果を実感できます。その例をいくつか紹介します。
夫婦仲が良くなる
夫婦仲が悪くなってしまう原因の一つに夫婦喧嘩があります。2018年にゲンナイ製薬株式会社が実施した「夫婦げんかに関するアンケート調査」の結果を見ると、夫婦喧嘩の原因第一位は「家事の分担・やり方」でした。つまり、家事を効率よく分担できれば喧嘩も減り、夫婦仲が良くなるとも言えます。
参考:夫婦げんかに関するアンケート調査
https://files.value-press.com/czMjYXJ0aWNsZSM1MjE0MiMyMTE0OTkjNTIxNDJfdG1IcllJTllZZC5wZGY.pdf
夫婦間でのコミュニケーションが増える
家事分担がうまくいっている家庭だと、自然とコミュニケーションが増えていきます。例えば、「お皿を洗ってくれてありがとう!」「洗濯物乾いたから取り込んでおくね」など、何気ない会話の一つでも、円満な夫婦関係を築くのに大切な要素です。
家事が楽しくなる
誰かに必要とされていると、人は嬉しい気持ちになります。お互いに協力して家事をすることで、お互いに頼られる存在になります。誰かのために働くことは「やりがい」にもつながり「もっと家事を頑張りたい」という気持ちが湧いてくるでしょう。
家事に対する意欲が湧く
家事を行うことで相手から感謝されることで自己肯定感が高まります。つまり、お互いに家事を分担していくことで、お互いに頼られる関係になります。必要としてくれている人のために家事をすることは「やりがい」にも繋がり、「もっと家事を頑張ろう」という気持ちになり、だんだんと家事が楽しくなってくるはずです。
子どもに良い影響を与える
子どもが進んで家事を手伝う家庭を作るには父親が家事を積極的に行う姿勢を間近で見せることが大切だという研究結果が、厚労省の「21世紀出生時縦断調査」でわかりました。父親が家事を「よくする」と回答した家庭のうち85%以上の子どもが家事を手伝うと回答しました。父親の家事参加は子どもの教育にとても関わっているということです。
参考:「21世紀出生時縦断調査」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/27-22a.html#link01
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共働きの夫婦が円満な家庭を保つには、家事をうまく分担しお互いの負担を減らすことが大切です。
もちろんどれだけ担当を決めていても、仕事に追われているうちに、余裕が無くなり家事がおろそかになってしまうこともあるでしょう。しかし、共働きだからこそお互いの苦労を理解できるかもしれません。夫婦のどちらかに家事の負担が偏りすぎないように、尊重しながら協力することが大切です。
家事分担を夫婦の問題にするのではなく、お互いが思いやりを持つことができるきっかけにすれば、家族の絆を深めることができます。家事の分担を通してより良い夫婦生活を目指しましょう。
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