人事の主要業務として、採用があります。その中でも、面接は新米人事のみならず、ベテラン人事にとっても非常に悩ましい業務の1つです。
今回は、面接という最もメジャーな採用手法の重要ポイントについて解説し、効果的な面接の進め方や面接時の質問例を筆者独自の観点で書き連ねて行きたいと思います。
\\この記事の筆者はこんな人//
キャリア・人事コンサルタント
理工系大学修士号取得後、ベンチャー企業に新卒で入社し、人事の立ち上げから採用・育成の責任者を務める。人材ビジネスにおいても営業統括として従事し、就活・人事のプロフェッショナルとして、2016年に独立。キャリアセミナーや人材育成が得意領域。2022年より株式会社shabell 取締役COO就任。
面接は万能の選考ではない
これは全くの持論ですが、採用ミスマッチの原因の多くは面接という選考手法に期待しすぎていることにあると思っています。
・主観を排除することが難しい
・言葉では何とも言えるがその場で事実を確認できない
・わかりやすい長所、短所しか見えない
・会話力が上手いと評価がブレる
そもそも、人間という感情をベースにした生き物が、バックグラウンドの違う他者を短時間で仕事ができるかどうかを判断することは不可能に近いのです。
面接では、求職者が「(面接官である)私にとってどんな人にみえたか」という主観を含めた印象と、求職者の主観によって切り取られた自分が経験したと思っていること・持っていると思っているスキルを求職者が選択した表現方法によって得られるだけです。
そこには客観的事実はほとんどなく、本当にその求職者が経験したことも本当にその人ができることも実はよくわからないんです。
こんな話を聞くと、
「え、じゃあ面接って意味ないじゃん。めっちゃ時間使っているのに、なんだよ〜〜」
と言いたくなりますよね。
ここで私がお伝えしたいのは、
面接という選考方法では、判断できることとできないことがあるんだよ
ということで、面接が全く無意味であるということではありませんので、ご安心を。
面接で見極めきれないことを明確にしておく
さて、ここで面接うんぬんの前に確認しておきたいのが、自社の評価軸と評価基準って何だっけ、ということです。
例えば、継続力という求める能力や評価項目があったとします。
まず自社が定義する継続力というのは、どんな時に何ができる力のことでしょうか?
1つのことを続ける力のことなのか、困難な状況でも目標達成のために努力し続ける力なのか、、、
面接に当たる人全てがこの言葉の定義が揃っている状態ではないと、当然同じ評価を下すことはできません。加えて、それを面接でどのような質問で、どれぐらいのレベルで合格とするかを全員の共通認識としなくてはなりません。
求める人物像の全てを面接で見極めるというのはここまで明確に基準化、言語化するということです。
そう、正直大変ですよね。
私はよく、人事コンサルタントとして、面接指導にあたる際、「面接とは、欲しい人を採用するためのものではなく、入社してはいけない人を見極めるためのものなんだよ(ドヤ顔)」と伝えています。
たとえば例に挙げた、継続力があるかは面接で見ることは不可能だと思っています。たまたま続けただけかもしれませんし、本人の努力以外のサポートが本当はあって継続できただけかもしれません。
ただ、面接を活用して、継続力がない人を発見することはできます。
ないことを見抜く?はて、どういうことでしょうか?
なんかこんがらがってきました。
面接は相互理解をするための場である
面接官だけでなく求職者も面接を質問する(される)場だと思い込んでいる方も多いかもしれません。
私は、面接を観察の場だと思っています。
「この人に本音を語らせるためにはどうしたらいいかな」
「準備してなさそうなこと話してもらわないとな」
「評価じゃなくてとりあえず、この人のことを知ることに集中しないと」
そんなことを考えながら面接に挑みます。だから、求職者と同じくらい私も緊張しています。
ちゃんとこの人のこと理解してあげられるかな、汲み取ってあげられるかな、そんな不安と戦いながら面接に向かうわけです。
自分の中での理想型は、質問と回答という流れではなく、会話・対話のようにスムーズにどちらかが主導権を握る形ではなく相互的に進むイメージです。
もちろん、評価基準の中に返答するスピードや問答のスムーズさ、面接への準備度合いを見極め材料として重く見ている場合は、質問形式のままでも良いと思います。あくまで、私の場合ですから。
ヘレン的面接の流儀
面接官として自己紹介した後、面接の冒頭では面接の目的とスタンスについてお話します。
「今日の面接は見極めの場ではなく、お互いが一緒にやっていけそうかを判断するために情報収集する場だと思っています。いいことだけでなく、悪いことも含めて高め合い、補い合うことができる関係を築けるだろうか?それを私だけでなく●●さんも今日の時間で検討してみてください。
その上で、お互い次のステップに進みたいか考える。私は●●さんのことを知りたいと思って質問します。評価を得ようとするのではなく、伝えたいこと知って欲しいと思っていることが伝わっているかを重視していただければと思います。」
次に、私が面接の中で意識しているのが、時間配分です。
イメージは私がインタビューする時間が半分、求職者の質問に答える時間が半分。
その上で、前半もできる限り、求職者が話しているボリュームの方が多くなるように心がけます。
そして最後に気をつけるのが、質問の仕方です。
私が面接の質問で使わないように心がけているのが、志望動機・強み・自己紹介などです。
新卒採用であれば、学生時代に力を入れたこと・自己PR・自己紹介・挫折した経験などもここに加わります。
もちろん、厚労省が定める公正な採用選考のガイドラインに抵触する質問も避けます。
例えば、志望動機の代わりに私は、媒体の掲載情報やメッセージなどで何が自分にとって応募する後押しとなったかを尋ね、そのきっかけから選考に進む中で働くイメージがどう形成されて行ったのか、動機形成のプロセスを尋ねます。
この時に気をつけたいのは、一気に質問しないことです。
1.何が気になって応募しようと思ったか
2.選考に進もうと覚悟を決めたのはどんな情報を元になのか
3.ここで働く自分をイメージした時にまずぶつかる壁はどんなことだと思うか
4.これまでの経験の中で、新しく環境が変わっても活かせそうなことはどんなことか
このような感じで相手がどれぐらい働くイメージを具体的に持てているのか情報収集していきます。ここでの注意点は、こちらが情報提供を十分にできているかです。量ではなく相手の理解を引き出す提供方法であったか、伝えたつもりになっていないかを内省しながら会話を進め、必要であれば回答しやすい言い回しの工夫や事例の提示を丁寧に行います。
採用に絶対解はない。リスク想定するだけ
ここまでたくさんいろいろなことを書き連ねて来ましたが、冒頭でも述べたように面接でわかることは、主観が混じった印象と予測、そして求職者の主張ぐらいです。
面接後、私の頭の整理は以下のように行われます。
↓
どうやらこの人はこういう経験をして来たらしい
↓
そして、その経験によってこんなスキルを得たと本人は言っている
↓
この人は、物事に対してこんなふうに考える傾向にあるようだ
↓
入社したいと言っているが本当かな
そしてその上で、
この人はうちの会社に入社して、この環境を活用して自分で幸せになれるだろうか
を考えます。
良いか悪いかではなく、お互いが必要とし合えるかをイメージしてみるのです。
苦労するのはどんなポイントだろうか、それをサポートする環境はあるか、本人が乗り越えられるとすれば、それは過去のどんな経験がベースになるだろうか。
シミュレーションし、あらゆるリスクを想定した上で、採用を検討します。
こういうリスクがありそうけど、それでも働いてもらいたいと思うかを考えるわけです。
こうして晴れて採用となっても、それが正解ではありません。
採用の次は、活躍。活躍の次は定着。定着の次は成長。。。。
人も企業も社会も変化し続ける中で、絶対解を求めることがそもそもナンセンス。
不幸にしないことと、両想いを目指すことを心に決めつつ、ひとりよがり(企業よがり?)にならない採用方法を試し続けることが一番大切なのではないかな、と自戒の意味を込めて結びます。
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