今回はベンチャー企業の正社員として働きながら、ラッパーとしてもAppleMusic注目アルバムに選ばれるなどの活躍を見せているHa0(ハオ)さんにインタビューさせていただきました。クールに見える表情の裏側にある、ラッパーとしての音楽に対する熱い想いや家族、仲間に対する優しい想いを見せていただきました。
夢を追いかけたい気持ちと就活の現実に挟まれ悩んでいる学生さん、子どもの就活に悩む親御さんに、特に読んでいただきたい記事です。
将来の夢は「スポーツドクター」!?大人びていた幼少期
ー幼少期の夢はどんなものでしたか?
Ha0さん:小さい頃はプロ野球選手になりたいと思っていました。野球をすることが楽しくて、一生懸命にやっていました。小学校の高学年くらいになると、ストレートに夢を語るのが恥ずかしくなってきて、選手ではなく「スポーツドクターになりたい」と、色々調べたりしていました。どこか格好つけたような、中2病を早くも患っていたのかもしれません(笑)
ーラップに出会ったのはいつ頃ですか?
Ha0さん:クールに見せていた小学生でしたが、当時から“何かで有名になりたい”という漠然とした想いを抱いていました。その“何か”は音楽かなと、なんとなく感じていたんです。
でも、実際にラップをやり始めたのは大学生のことでした。当時、周りでラップが凄く流行っていて、ラップバトルの動画が人気になっていたり、各地にサイファーがあったりしました。
※サイファー:ラッパーやブレイクダンサーが輪になって技を繰り広げあう行為のこと
僕の通っていた大学は御茶ノ水にあったので、そこから近い秋葉原のサイファーによく参加していました。仮面ライダーなどの特撮作品が好きだったこともあって、そのサイファーに集まっていた人達とラップ以外のことでも意気投合できたんです。そうして仲良くなったのが、No’s-Coreの3人です。この3人とは、年齢も経歴もバラバラなんですが、様々なカルチャーの話をしたり、お互いのラップ技術について指摘し合ったりして、とても良い関係性を築けています。
↑2019年に結成されたラップクルー「No’s-Core」 左から(COOH)2,Ha0,TAKI,Aotk
ラッパーでありITベンチャー企業社員!?
ーラッパーと正社員という二足の草鞋を履くまでの経緯を教えてください。
Ha0さん:遊び感覚で始めてみたラップでしたが、サイファーに参加しているうちにどんどんのめり込んでいきました。
次第にラッパーとしてライブやイベントに参加させてもらえるようになって、就活をする頃には「この道を真剣に進んでいこう」と考えていました。とは言え、レコードデビューしているなどの実績があったわけでもないので、いち就活生として大手レコード会社などを狙っていったんです。しかし、ライバルになる就活生は学歴や経歴で突出している人が多く、ろくに準備をしてこなかった僕はことごとく落とされ続けました。
そこで、会社選びを音楽で括るのではなく切り離して考えるように方向転換し、行き着いたのがベンチャー企業という方向性でした。会社説明会で現在の会社の代表に出会い、拾ってもらって今があります。
そして入社後すぐに新規事業部に配属され、提携している他社の社員さんと一緒に働く機会がありました。そこで出会った方は、同じベンチャー企業でバリバリ働きつつお笑い芸人としてもNHKの新人お笑い大賞で優勝されていたりとご活躍されている方でした。その方とご一緒できた経験は、僕にとって大きな刺激になりました。また、二足の草鞋でどちらにも本気で挑んでいこうと奮い立たせてくれた存在でした。
ーそれぞれの活動の様子を教えてください。
Ha0さん:音楽活動では、自主レーベル「トキイロスタジオ」を立ち上げ、サイファーで出会った10人で撮影や編集を分担して制作活動しています。No’s-Coreの3人以外はみんなソロで活動をしていますが、イベントの際は一緒に出演したりして、程よい距離感で活動しています。
最近は、全員が集合する機会はほとんどないのですが、LINEのグループは常にアクションがあって気がつくと未読が200件も溜まっていたりします。まあ、ほとんどがくだらない話なんですけどね(笑)でもラップに対しては、それぞれ強い想いがありますから、イベントなどで誰かが不調だったりすると、メンバーからのツッコミが殺到します(笑)だからこそ「格好悪いパフォーマンスはできない」とモチベーションの向上にも繋がっています。
会社員としては、学生向けの就活イベントの集客を主に担当しています。まだ新卒2年目ですが、少人数のベンチャー企業だからこそ幅広い業務を任せてもらっています。最近は、社内で開催されたアイディアピッチで優勝をして、発案したものを実現するために現在準備を進めています。
また、感染症対策もありほとんど在宅ワークをしていますが、同じオフィスで業務をすることが減っても、距離感が変わらないところも会社の魅力の一つです。
リモートでも打ち合わせで対面できますし、会社の人たちはみんな温かくてラッパーとしての音楽活動も含めて僕のことを応援してくれています。時間報酬ではなく成果報酬というのが会社の方針なので、意欲を持って取り組める点でも僕の性格には合っていると思います。
ラッパーとして大躍進!軸となっている強い想い
ー音楽活動の面では、2022年に入り大躍進を見せていますよね。
Ha0さん:そうですね。ソロアルバム「SPARKLENS」がリリースから約1ヶ月でサブスク総再生回数が急増しました。アルバムや曲が注目トラックに選ばれてからの急展開に正直自分でも驚いています。でも、想いを込めたものが評価してもらえて、すごく嬉しいです。
また、実はアルバムに入っている「Swish」という曲に僕が好きな日向坂46の齊藤京子さんの名前をさりげなく入れたんです。そしたら、ご本人が聞いてくださったらしく、ファン向けの有料配信で話題にされていたことを、ファンづてに知りました。これには、嬉しすぎて鳥肌が立ちました!いつも画面越しに見ている方に聞いてもらえて、夢のような話でした。
ーそれはすごいですね!Ha0さんの曲にはポジティブな言葉が多く、ストレートに響く歌詞にとても惹き込まれました!
Ha0さん:そう言ってもらえるのはすごく嬉しいです。日本のヒップホップをリードしてきたラッパーをはじめとした方たちって、社会に対して疎外感を感じる人の味方になってきた背景があると思うんです。僕自身もそういうところが好きだし、リスペクトしているんですが、いざ自分が作詞をする時、社会への反発や大人に対する不満を思っていないのに歌っても仕方がないという考えのほうが先行するんです。両親に大切に育ててもらって、大学までお金も出してもらった僕が社会に対して反発するのって違和感があると思っています。
今はSNSなどで社会に対するネガティブな情報って目にしやすいし、ラッパーの中には社会に反発しなくちゃいけない思考になっている人もいる気がするんですよね。でも、普通に生きてて毎日楽しいから、僕はそれでいい、この感情をそのまま歌詞にしようと意識しています。また、僕はJ-POPやロックが元々とても好きなので、その要素が強く入っている気もします。
両親から受けた愛情“刺すだけじゃなく背中を押せる曲”へ
ーアルバムに収録されている曲「ROT6」の冒頭にも、ご両親を歌ったフレーズがありますよね?
Ha0さん:そうです。両親のことは大好きで、尊敬もしています。いつも心のどこかに「あの2人の息子なんだから負けるわけない」という自信があるんです。だから、2人の自慢の息子でありたいという気持ちも強いです。そんな想いを載せたのが「ROT6」の1フレーズですね。
ーご両親はどんな人なんですか?
Ha0さん:小さい頃から何かを強制されたことがないんです。でもやっていいこと悪いことの線引きはいつもされてて、自分のやりたいことをさせてもらっていましたが、一線を越えるとめちゃくちゃ怒られるという教育だったと思います。
そんな環境下で、特に親の凄さを感じたのは高校生の頃でした。学校の雰囲気に馴染めずに悩んでいた時、お金を払って私立に入学したにもかかわらず、あっさりと「編入したいならしていいよ」と自分の味方になってくれた時です。結局、編入せずに続けたのですが、その後の進学先を選択する時も常に親は僕の味方でいてくれました。そんな恵まれて育った僕だからこそ、曲に対して「刺すだけじゃなく背中を押せるものを作りたい」という軸みたいなものがあります。
大好きな音楽を“稼げないから辞める”がない
ーダブルワークというご自身のスタイルをどう考えていますか?
Ha0さん:僕は就活に苦戦していた時に、ベンチャー企業に行き着いて、説明会のちょっとした質問から目に留めていただいて採用のご縁をいただきました。今では、元々狙っていた大手企業ではなく、このベンチャー企業に入社してよかったと思うことばかりなんです。
日中働いていることによって得られる知見も多いですし、時間が限られることによって、音楽活動に対するベクトルが強いままでいられると感じています。そして、大好きな音楽に対してお金が稼げないから辞めるという結末になることがないんです!音楽活動のためにフリーターを選択したり、両立を目指したけど結局忙しくて音楽を辞めたり、そんな話をたくさん聞いてきたからこそ、自分の環境は恵まれていると思います。
ーその道のプロとして相談を受けることに対して、Ha0さんの想いを聞かせてください。
Ha0さん:僕自身の経験や周囲の人たちの境遇から、会社員と音楽活動の両立の難しさを実感しているので、今まさに就活中で音楽との両立に悩んでいる方がいたら力になりたいと思っています。就活をしているうちに、自分の長所や好きなこと、音楽への気持ちを見失うこともあると思います。そんな人の共感者であり、サポーターになれたらいいなと思っています。
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今回は、2足の草鞋の両方で急成長中のHa0さんにインタビューさせていただきました。
ご両親から受けた溢れる愛情を、曲として表現していこうとする想いを語ってくれたHa0さん。外見や声から感じるクールさとは真逆の暖かく優しい心に魅了されました。
shabellbaseでは今後も多種多様なキャリアを築く方々を紹介しています。
あなたの夢探しやライフプランに役立つヒントを見つけてみてください。
- Ha0さん
はお|ラッパー東京都出身。大学時代にラップを始め、現在ではITベンチャー企業で正社員として勤務する傍らラッパーとしても活躍中。2022年1月にソロアルバム「SPARKLENS」をリリース。Spotify公式プレイリスト「New era Japan Hiphop」に選出されるなど注目を集めている。
Ha0公式リンク:https://lit.link/ha0
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