皆さんはインターンシップというと、いつ経験しましたか? 多くの方は大学在学中、例えば3年生の夏休みなどを思い浮かべるかもしれません。
私が初めてインターンを経験したのは大学卒業後でした。少し変わったタイミングですよね。しかし、インターンを始めるのに「遅すぎる」なんてことはないと今では思います。大学の友人たちが3年生の頃からインターンに参加して就職先を決めたり、順調に社会人への階段を登っていく中で、俳優として仕事をしていた私は少し異色の学生だったかもしれません。友人たちが説明会や面接に奔走する中、私は相変わらず撮影現場とオーディション会場を行ったり来たりする日々でした。エントリーシートではなく台本を読む日々に、「このままで大丈夫かな…」と肩身の狭さを感じる瞬間もありました。
実は私は大学2年生の頃から役者として仕事をしながら学生生活を送っていました。そのため、いつ撮影が入るかわからなかったりするので、決まったシフトのアルバイトをするのは難しかったのです。卒業後、「このまま役者一本で生活していけるだろうか?」という不安が頭をよぎりました。しかし、収入や将来のキャリアを考えると、別の経験も積んでみたい。でも、役者という夢も続けたい――この相反する思いに悩んでいた時に出会ったのが、株式会社shabellのインターンでした。
思い切って応募し、その判断が結果的に私の人生に大きな転機をもたらすことになったのです。
エンタメ理解と柔軟な働き方に惹かれて
shabellはエンタメへの理解が深く、柔軟な働き方を応援してくれる企業でした。面接で自分が役者活動を続けたいことを正直に伝えたところ、「面白い経歴ですね!」と前向きに受け止めてくれたのです。普通なら「本業に専念できるのか?」と心配されてもおかしくない状況だったと思います。しかしshabellでは、役者としての経験も一つの個性や強みと見てくれました。そして撮影日や、オーディションがあった時は柔軟にシフトを調整できるよう配慮していただき、「ここなら自分らしく働けそうだ」と感じたのを覚えています。
実際、撮影が忙しくなった時は1週間ほどお休みをいただいたこともあります。その間、チームの皆さんは「撮影頑張って!」と快く送り出してくれました。復帰後も「どうだった?」と成功を一緒に喜んでくださり、私の不在中の業務をカバーまでしていただいて……感謝してもしきれません。こんなふうに柔軟に働かせてもらえる分、自分もその期待に応えたいという思いで、ますます仕事に熱が入りました。
こうして2021年、私は新卒でありながら他の新入社員とは異なる形で、インターンシップ生活をスタートさせました。通常の正社員とは違う立場ですが、「インターンだから雑用だけ」ではなく挑戦の機会をたくさん与えてもらえる環境に胸が高まったのを覚えています。当時は期待と不安が入り混じっていましたが、「やるからには全力で学ぼう」と心に決めた瞬間でもありました。
アプリ開発・マーケティングの現場へ飛び込む
インターンとして配属された先は、スマートフォンアプリの開発チームとマーケティングチームでした。初日から専門用語が飛び交うミーティングに参加し、正直最初は頭がフル回転でした。
会議中、聞き慣れない単語が飛び出すたびに頭の中は「???!」状態。ノートには謎のカタカナ用語がびっしりと書き込まれていました。それでも放置はせず、後から意味を調べたり先輩に質問したりして、一つずつ理解を深めていきました。
ありがたいことに、shabellではインターンにも社員と同等の実務経験を積ませてくれました。私は単なるサポート要員ではなく、チームの一員としてプロジェクトに関わることができたのです。例えば、アプリの新機能を検討するブレインストーミングでは遠慮なく自分のアイデアを発言しましたし、マーケティング戦略の会議でもデータを分析して意見を求められました。技術の素人である私の意見でも「それ新鮮でいいね!」とチームに受け入れられることがあり、自分の異色な経歴が逆に武器になるのだと感じられた瞬間もありました。わからないことがあれば社員の方々が丁寧に教えてくださり、徐々に専門知識やビジネスの思考法も身についていきました。
インターン期間中、私は次のような 貴重な経験 をさせてもらいました。
・アプリ開発の現場体験: ユーザー目線でのUI改善提案や新機能のアイデア出しに参加しました。自分の提案がプロダクトに反映される可能性があると思うと、責任感とやりがいを感じました。
・マーケティング業務への参画: SNSキャンペーンの企画立案や、広告運用の効果分析にも挑戦。数字とにらめっこする日々は大変でしたが、ユーザーの反応をダイレクトに知ることができ、成果が出たときは素直に嬉しかったです。
・チームで働くこと: 役者の頃は個人プレーが中心でしたが、開発・マーケチームでは皆で目標を追いかけます。終業後のミーティング(簡単な進捗共有)では、自分の担当だけでなくチーム全体の動きを把握する大切さを学びました。
最初は分からないことだらけでしたが、その分毎日「今日はこれを覚えた」「こんなスキルが身についた」と成長を実感できました。新しい環境に飛び込む怖さよりも、学べる喜びの方が大きかったのです。
オウンドメディア立ち上げと200本のコラム執筆
インターンを始めてしばらく経った頃、会社のオウンドメディア「shabellbase」を立ち上げるプロジェクトが始動しました。
私はそのコンテンツ制作メンバーに抜擢され、主にコラム記事の執筆を担当することになりました。文章を書く仕事はほぼ未経験で、最初は正直不安でした。「役者の自分にビジネスやキャリアのコラムなんて書けるのだろうか?」と悩んだのを覚えています。ところが、いざ書き始めてみると、自分の演劇での経験や視点が意外にも文章に活きる場面が多くありました。たとえば、撮影で培った表現力や想像力は文章にも応用できましたし、人の気持ちを想像して役作りをするように、読者の気持ちを考えて記事を書くことができました。ある意味、キーボードの前が私の新しい舞台であり、記事を読む読者がお客さんです。そう考えると、書くことも演じることも根っこの部分では繋がっているのかもしれません。何より、様々なテーマで記事を書く過程は、自分自身の考えを整理したり新しい発見をする良い機会になったのです。
そうしてペンを動かし続けているうちに、気づけば書いた記事は200本を超えていました。もちろん、執筆初期は試行錯誤の連続でした。一文を書くのに何十分も悩んだり、伝えたいポイントがぼやけて先輩に赤ペンを入れてもらったり…。しかし記事を重ねるごとにコツを掴み、いただくフィードバックも減っていきました。自分の成長が形として蓄積していく実感に、密かな誇りを感じていたのを覚えています。
また、記事執筆にとどまらずプロへのインタビュー取材も経験しました。例えば、他業界で活躍するプロフェッショナルにお話を伺い、そのキャリア観を記事にまとめるといった仕事です。初めての取材では緊張で心臓がバクバクでしたが、事前準備を入念に行い、相手の話を引き出せたときは本当に嬉しかったです。プロの方々の人生観や仕事哲学に触れることで、自分自身の視野も大きく広がりました。
そして、コラム執筆や取材を通じてSEO(検索エンジン最適化)の基礎やアクセス解析についても学びました。記事のタイトルや構成を工夫して狙った読者に届ける方法や、検索で見つけてもらうための工夫など、メディア運営ならではの戦略の面白さにも目覚めました。単に記事を書くのではなく、「どうすればより多くの人に読んでもらえるか」を考えることで、発信者としての視点も養われたと感じます。
こうしたメディア運営の経験を通じて、私はビジネスの世界にも自分の居場所を感じられるようになりました。それまで役者としての世界しか知らなかった私に、新たな視野と自信を与えてくれたのがインターンでの日々だったのです。
インターンで得た学びが現在の仕事に活きる
このようにインターンを通じてライティングやインタビュー、マーケティングなど幅広いスキルを身につけた私は、2025年から思い切ってドラマ制作のプロデューサーという全く新しい世界に飛び込みました。
役者として活動しながら、映像の裏方にも興味があり、縁あってドラマ制作に携わる機会を得たのです。仕事は大きく変わりましたが、不思議なことにshabellのインターン時代の経験が随所で役立っていると日々感じています。役者からプロデューサーへと役割は大きく変わりましたが、人を楽しませたいという根本の想いは何一つ変わりません。そのために必要なスキルをインターンを通じて培えたことは、自分にとって大きな財産だと感じています。
例えば現在、企画やリサーチ業務を行う上で、インターンで培ったスキルが大いに活きています。新しいドラマ企画を立てる際には、マーケティング目線で「視聴者は何を求めているか?」と考える癖が自然と身についていました。これはマーケティングチームでユーザー視点を鍛えられたおかげです。また、企画書やプレゼン資料を作成する際には、コラム執筆で磨いた文章力や構成力が物を言います。伝えたいメッセージをわかりやすく整理し、相手に響く言葉を選ぶ力は、記事を書き続けたからこそ養われたものだと実感します。
ドラマ制作ではリサーチや人脈作りも重要です。脚本の題材に関する調査で専門家に話を伺う場面などでは、インタビュー取材の経験が役立っています。どんな準備をし、どう質問すれば核心的な情報を引き出せるかなど、インターン時代に身につけた「聞く力」「調べる力」が今まさに武器になっています。そして何より、未知の分野に飛び込むときの度胸と学習力は、初めてのインターンでゼロから必死に学んだあのときの経験が土台になっています。「まずはやってみよう」「わからなければ調べ、聞けばいい」というマインドセットは、shabellでの日々から得た宝物です。
現在は忙しい日々ですが、インターン時代に身につけた自己プロデュース力も活きています。自分を売り込むための見せ方や、周囲を巻き込んでプロジェクトを進めるコミュニケーションなど、当時学んだメディア戦略の知識が随所で役立っています。例えば、新たな業界に挑戦する際には、自分の強みややりたいことを的確にアピールする自己PRのコツがインターンを通じて身につきました。面接や人脈作りの場面でも、文章で鍛えた論理的な伝え方やマーケティングで学んだ効果的なアピール方法を活用できたと感じています。まさかIT企業のインターン経験がエンタメ業界のプロデューサー職に通じるとは思いもしませんでしたが、振り返ると確かに繋がっているのです。
ちなみに、役者としてのバックグラウンドも今の仕事で強みになっています。俳優の気持ちが分かる分、撮影現場でのコミュニケーションが円滑にできますし、作品作りで演出のアイデアを出す際にも役者目線の発想が活きます。異なる業界や経験を掛け合わせることで、自分にしかできない価値を生み出せるのだと実感しています。
どんな人生になるか分からなくても、役に立たない経験なんてない
インターンを始めた当初の私は、自分のキャリアがこの先どうなるのかまったく分かっていませんでした。役者の夢を追いながら、縁あって飛び込んだIT企業でのインターン。将来ドラマのプロデューサーになるなんて、想像すらしていません。それでも、今は胸を張って言えます。「どんな人生になるか分からなくても、役に立たない経験なんてない」のだと。
あのとき勇気を出してインターンに飛び込んだからこそ得られたスキルや出会いが、遠回りに見えたとしても今の私の土台を支えています。すべての経験が点と点となり、時間を経て線で繋がっていく。まるで伏線回収のように、後になって「あの経験はこのためにあったのか」と気付く瞬間があります。実は、インターンを修了するときに社長から「君ならどんな道に進んでも大丈夫」と声を掛けていただいたことがありました。当時はその言葉を半信半疑で聞いていましたが、今ならその意味がよくわかります。過去の経験は決して消えてなくなるものではなく、今も自分の中に蓄積され、私を支え続けています。インターン時代に出会った仲間や先輩方との絆も、今の私を支えてくれる大切な宝物です。
もし今、この文章を読んでいるあなたが「自分の今の経験は将来に意味があるのだろうか?」と不安に思っているとしたら、どうか安心してください。あなたの「昨日」(過去の経験)は、きっとあなたが思う以上に大きな財産になります。昨日があるから今日があり、今日の挑戦があるからこそ明日の自分が変わっていきます。
私もこの先、自分の昨日を信じて新たな挑戦を続けていきます。あなたもぜひ、自分の今の経験を大切に、未来への一歩を踏み出してみてください。あなたの昨日は、きっと明日のあなたを支えてくれます。