「人材業界はやめとけ」と聞いたことがある人は多いのではないでしょうか?
実際にネット上の口コミや転職サイトの評判を見ても、「ノルマがきつい」「メンタルを削られる」「長時間労働が当たり前」など、厳しい声が目立ちます。一方で、「成果を出せば高収入を得られる」「ビジネススキルが鍛えられる」「やりがいがある」といったポジティブな意見もあります。
このように賛否が分かれる人材業界ですが、本当に「やめとけ」と言われるほど厳しいのでしょうか? 今回は、人材業界のリアルな実情を掘り下げながら、「どんな人が向いているのか」「どんな人には厳しいのか」について詳しく解説していきます。
人材業界の基本構造と主な仕事内容
「人材業界」と言っても、さまざまな分野が存在します。大きく分けると、以下の3つに分類されます。
① 人材紹介(転職エージェント)
転職を希望する求職者と人材を求める企業の間に立ち、最適なマッチングを行う仕事です。企業が採用を成功させた際に成功報酬として紹介手数料を得るビジネスモデルで、成果報酬型のため求職者が入社しない限り利益が発生しません。
【主な業務内容】
・求職者とのキャリア面談・アドバイス
・企業への人材提案・求人票作成
・面接のセッティングやフィードバック
・内定後のフォローアップ
人材紹介業は、企業と求職者の両方とやり取りをするため、コミュニケーション能力や交渉力が求められます。成果が出れば高収入を得られますが、その分プレッシャーも大きいのが特徴です。
② 人材派遣
人材派遣は、企業に派遣社員を提供し、派遣期間中のマージンを得るビジネスモデルです。一般的に、派遣会社は派遣スタッフの給与を支払い、企業からはその給与+手数料を受け取ります。
【主な業務内容】
・派遣スタッフの募集・登録面談
・企業のニーズに合った人材のマッチング
・契約管理・派遣社員のフォローアップ
・就業先企業との調整業務
人材派遣は、長期間にわたり派遣スタッフと企業の関係を管理する必要があるため、信頼関係の構築が重要になります。
③ 求人広告・採用支援
企業の採用活動をサポートし、求人広告の掲載やブランディングを行う仕事です。
【主な業務内容】
・企業の採用ニーズのヒアリング
・求人広告の提案・作成・掲載
・採用ブランディングの企画・実施
・採用イベントや合同説明会の運営
成果報酬型ではなく、広告掲載料で収益を得るため、契約が取れれば安定した収益につながるのが特徴です。しかし、企業の採用状況に左右されやすく、市場環境によっては契約が取りにくいこともあります。
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人材業界が「やめとけ」と言われる10の理由
・長時間労働が当たり前になりやすい
・板挟みのストレスが大きい
・離職率が高く、職場の雰囲気がピリピリしがち
・給与の格差が大きく、安定しにくい
・求職者が急に内定を辞退し、成果が無駄になることがある
・企業側の要望が厳しく、求職者を紹介しにく
・業界の評判が悪く、求職者や企業に警戒されやすい
・市場の景気に大きく左右される
・クレーム対応が多く、メンタルが削られる
① ノルマが過酷で精神的に追い込まれる
人材業界では、営業成績がそのまま評価につながるため、「数字がすべて」の世界です。特に人材紹介や求人広告の営業では、毎月の契約件数や売上目標が設定され、達成できなければ厳しい叱責を受けることもあります。
「何件アポを取ったのか」「何人の求職者を面談したのか」など、細かく管理されるため、日々プレッシャーとの戦いになります。営業未経験者や、成果主義に慣れていない人にとっては非常に厳しい環境と言えるでしょう。
② 長時間労働が当たり前になりやすい
人材業界は労働時間が長いことで有名です。特に、求職者と面談を行う転職エージェントの場合、仕事終わりの時間帯や休日に面談を設定することが多くなります。
また、企業の担当者との打ち合わせも日中に行うため、結果的に1日のスケジュールがパンパンになり、残業が増える傾向にあります。
「プライベートの時間を確保したい」「ワークライフバランスを重視したい」という人にとっては、厳しい環境かもしれません。
③ 板挟みのストレスが大きい
人材業界では、企業と求職者の間に立つため、意見の食い違いが起きやすくなります。
例えば、
求職者:「この会社に行きたい!」 → 企業:「この人は求めるレベルに達していない」
このような状況は日常茶飯事で、間に立つ営業担当者はストレスを感じやすくなります。求職者が内定を辞退したり、企業の要求が厳しすぎたりすると、双方から責められることもあります。
人間関係の調整力が求められるため、精神的なタフさが必要な業界と言えるでしょう。
④ 離職率が高く、職場の雰囲気がピリピリしがち
人材業界は新卒・未経験から入社する人が多いものの、3年以内に辞める人が非常に多い業界です。特に、ノルマや労働時間の厳しさから早期退職する人が後を絶ちません。
そのため、社内の人間関係がギスギスしていることも多く、「常に誰かが辞める環境」で働くことになります。先輩や上司も日々の業務に追われているため、新人教育が十分に行われず、放置されることも珍しくありません。
⑤ 給与の格差が大きく、安定しにくい
人材業界では、インセンティブ制度を採用している会社が多く、契約件数に応じて給与が増減します。成果を出せば高収入を得られますが、未達成の場合は基本給しかもらえないこともあります。
特に、基本給が低く、歩合制の割合が大きい企業では、安定した収入を得るのが難しくなります。月によって収入が大きく変動するため、「今月は契約が取れず、手取りが少ない」ということも珍しくありません。
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⑥ 求職者が急に内定を辞退し、成果が無駄になることがある
人材紹介業では、求職者が企業に入社して初めて成功報酬が発生します。しかし、内定を獲得した後に求職者が辞退するケースもあり、そうなると数週間・数ヶ月かけてサポートしてきた努力が水の泡になります。
特に、求職者の意思決定が揺れやすい時期(内定承諾前後)には、頻繁に連絡を取り、フォローを続けなければなりません。せっかく内定を取ったのに「やっぱり他の会社に行きます」と言われたときの虚しさは、人材業界で働く人なら誰もが経験するでしょう。
⑦ 企業側の要望が厳しく、求職者を紹介しにくい
企業が求める人材の条件が厳しすぎることも、人材業界の大きな課題の一つです。
例えば、
・「優秀な人材が欲しい」と言いながら、給与水準を引き上げようとしない
・「早く採用したい」と言いながら、選考プロセスが長すぎる
このような状況の中で、企業と求職者の間を調整しなければならないため、非常に神経を使います。
⑧ 業界の評判が悪く、求職者や企業に警戒されやすい
人材業界は、求職者や企業に対して営業活動を行いますが、「しつこい営業を受けた」「強引に転職を勧められた」といった悪い印象を持っている人も少なくありません。
特に、転職エージェントに対して「転職させて手数料を稼ぎたいだけでは?」と疑いの目を向ける求職者もいます。そのため、最初の信頼関係を築くのが難しく、「冷たくあしらわれる」「話を聞いてもらえない」ということも日常茶飯事です。
⑨ 市場の景気に大きく左右される
人材業界は、景気の影響を受けやすい業界の一つです。景気が悪化すると企業の採用意欲が低下し、契約が取りにくくなります。特に、リーマンショックやコロナ禍のような不況時には、多くの人材会社が売上を落とし、リストラが相次ぎました。
安定した業界を求める人にとっては、人材業界の不安定さは大きなデメリットになるでしょう。
⑩ クレーム対応が多く、メンタルが削られる
人材業界では、「企業」と「求職者」という二者を相手にするため、クレーム対応が多い業界です。
求職者:「こんな企業を紹介されるとは思わなかった!」
どれだけ丁寧に対応しても、思うように進まないことが多く、メンタルを削られることもあります。精神的なタフさがないと、長く続けるのは難しい業界と言えるでしょう。
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人材業界で働くメリットは?
ここまで厳しい側面を紹介してきましたが、人材業界には確かなメリットもあります。努力と適性次第では、大きなやりがいや成長を実感できる業界でもあります。ここでは、人材業界で働くメリットを6つ紹介します。
・成果を出せば高収入も可能
・人脈が広がり、キャリアアップに有利
・「人の役に立てる」というやりがいを感じられる
・業界や職種の知識が深まり、他業界へ転職しやすい
・独立・起業のチャンスがある
① ビジネススキルが短期間で鍛えられる
人材業界は、企業の採用担当者や経営者と直接やり取りをする機会が多く、ビジネススキルが圧倒的に成長しやすい環境です。
特に、以下のようなスキルは短期間で鍛えられます。
交渉力:年収や待遇の調整など、企業と求職者の条件交渉をする力
ヒアリング力:企業や求職者のニーズを的確に把握し、最適な提案をする力
コミュニケーション能力:幅広い年齢・職種の人と関わるため、対人スキルが鍛えられる
これらのスキルは人材業界だけでなく、どの業界に行っても役立つ普遍的なものです。そのため、人材業界での経験を積んだ後に、異業種へ転職して成功する人も少なくありません。
② 成果を出せば高収入も可能
人材業界はインセンティブ(歩合制)が導入されている会社が多く、成果を出せば年収1,000万円以上を狙うことも可能です。
特に、外資系や大手の人材会社ではインセンティブ制度が充実しており、契約件数や売上に応じて給与が大きく上がります。
例えば、以下のような給与モデルがあります。
・経験を積んでトップ営業マンになれば、年収1,000万円超えも現実的
・外資系人材企業では、年収2,000万円以上を稼ぐ人もいる
もちろん、成果主義のため安定した収入を得るのは難しいですが、「頑張りがそのまま給与に反映される仕事をしたい」という人には向いている環境です。
③ 人脈が広がり、キャリアアップに有利
人材業界で働くと、企業の人事担当者や経営者、ハイクラスの求職者と関わる機会が多くなります。そのため、自然と人脈が広がり、キャリアアップに有利になります。
例えば、以下のようなメリットがあります。
・業界の有力者とつながり、副業や独立のチャンスが広がる
・転職市場の動向を把握し、自分自身のキャリア戦略を立てやすくなる
人材業界で働いていると、他の業界の動きや市場価値の高いスキルを知ることができるため、自分の転職活動にも大いに役立ちます。
④ 「人の役に立てる」というやりがいを感じられる
人材業界の仕事は、単なる営業ではなく、「人の人生に関わる仕事」です。求職者が希望の仕事に就けたり、企業が良い人材を採用できたりすると、非常に大きなやりがいを感じます。
特に、以下のような瞬間はこの仕事ならではの喜びがあります。
・苦労してマッチングした企業と求職者が、長く良い関係を築いてくれる
・求職者の人生を変えるような転職をサポートできる
もちろん、成果を出すのは簡単ではありませんが、「人の役に立ちたい」という気持ちが強い人には向いている業界です。
⑤ 業界や職種の知識が深まり、他業界へ転職しやすい
人材業界で働くと、幅広い業界・職種の知識が自然と身につきます。求職者や企業の採用担当者と話す中で、各業界の最新動向や市場価値の高いスキルを学べるため、自分自身の転職にも役立ちます。
例えば、以下のようなスキルが身につきます。
・「この職種の年収相場は?」といった給与交渉の知識
・「未経験からこの業界に転職するには?」といったキャリア戦略
このような知識を活かして、人材業界での経験をもとに マーケティング、コンサル、IT業界などに転職する人も多い です。「人材業界を経験しておくと、他の業界でも応用が効く」というのは大きなメリットの一つです。
⑥ 独立・起業のチャンスがある
人材業界で経験を積むと、独立・起業の道も開けます。実際に、人材業界で営業経験を積んだ後、独立して「フリーランスの転職エージェント」や「人材紹介会社の経営者」になる人も少なくありません。
独立が可能な理由として、以下の点が挙げられます。
・人脈を活かして、自分のネットワークで案件を獲得できる
・企業の採用支援やキャリアコンサルタントとして活動できる
特に、最近は「フリーランスの転職エージェント」として成功している人が増えており、「会社に縛られず、自分のペースで働きたい」という人には魅力的な選択肢です。
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