皆さん、「旅」は好きですか?
旅ってどんなときに、どんな気持ちで、行くものでしょうか。
今回は、TABIPPOのCCOで「POOLO」学長の恩田倫孝さんへのインタビュー後編です。
恩田さんにとって旅とは?
その考え方や、これからのビジョンについて伺っていきます。
暮らすように、世界一周
ー世界一周は具体的にどのように進めたのですか?
恩田倫孝さん:“暮らすように旅をする”ことをモットーに、約1年かけて、約20カ国を旅しました。少なくとも1か月はいないと、現地の暮らしは見えてこないと思ったので、大抵約1か月は同じ所に滞在していましたね。ホームステイをしたり、アパートを借りて滞在したり、現地の生活に入り込む旅を意識していました。
大学時代のバックパックは刺激を求めての「冒険」でしたが、世界一周の旅は、「生活を経験したい」という思いが強かったです。
旅の最初に行ったのが、アメリカで開かれるバーニングマンというフェスです。最高に盛り上がるイベントを旅の初めにもってくることで、この世界一周は常にこれ以上楽しい旅にしよう、とハードルを上げておいたんです(笑)
その後各国にいって、巡礼をしたり、カーニバルにも参加しました。太鼓の練習をしたら参加させてもらえるということだったので、3週間特訓して参加したんです。旅を充実させるために、語学学校にも通いましたね。英語を磨くためにフィリピンの学校に行ったり、スペイン語を現地で学んだりしました。振り返ると5カ国の学校に通ったので、学ぶ時間も多かったですね。
ー世界一周を通して学んだことは、どのようなことでしょうか。
恩田倫孝さん:色々あって、一言にまとめるのは難しいです。しかも、年々学びが深まっているように思います。当時は分からなかったけど、後から気づくこともあったりするので。
でも1つ大きな要素は、自己決定でしょうか。旅は、自分で自由に決められる一方、責任も自分にあります。恐さもありますが、自分で自己決定することには楽しさもあると思うんです。その決定を正しいものにできるのは自分だけで、人のせいにはできません。
旅に出たことを正解にするために、いかに今の自分の旅を楽しくするかを、いつも考えてました。
ーそして世界一周を経て、人生の軸を旅に決めたんですね。
恩田倫孝さん:旅の間、目的探しを意識していたわけではありませんでしたが、旅に夢中になれたから、自分の軸は旅だな、と思ったんです。もし旅以外になるようだったら、途中で違うことを始めていたと思うんですよね。
でも、世界一周は終始楽しくて、他に意識が向くことはありませんでした。
そこで、帰国する頃、TABIPPOに入社を決めました。ただ当時、会社はまだ創業期で、キャッシュがあるわけでもなかったので、採用できないと断られて。低賃金でもいいと押し切っての入社でした。今でこそ言えますが、週6で働いて低収入のブラックな働き方でした(笑)
旅と日常を繋げるために
ー「あたらしい旅で自分と世界の豊かさをつくる次世代の旅人=『ニューノーマルトラベラー』が育つ学校」、POOLOの立ち上げに至った経緯をお聞きしたいです。
恩田倫孝さん:TABIPPOは、「旅で世界を、もっと素敵に」をビジョンに掲げています。つまり、旅を「手段」にして、世の中をよくすることを目指しているんですね。
そこで、ミッションを「若者が旅する文化を創る」「旅で人生が豊かになる仕組みを創る」と設定して、旅の魅力を発信してきました。
ですが、イベントなどで実際に学生や若者の声を聞く中で、旅がどれだけ人生に影響を与えられているのだろうか、と考えるようになって。
確かに、週末や長期休暇に旅を楽しむ人が増えていることは感じていました。でも、そうした旅が「非日常」で終わってしまって、帰国したら切り替えて、いつも通りの「日常」を送るようでは、意味がないな、と思ったんです。
そこで旅と「日常」をつなぐために、POOLOを立ち上げました。デザインやプログラミングなど、スキルを学ぶ学校は数多くありますが、自分の人生を考える学校はあまりありませんよね。POOLOは、デンマークの「人生の学校」のように、旅を手段に「人生の豊かさ」について考える学校です。
ーPOOLOの運営を通して、学長の恩田さんご自身が学んだことはありますか?
恩田倫孝さん:豊かに生きることの鍵は、「自己理解」と「共創力」にあると考えるようになりましたね。
社会人になると、自己分析を忘れてしまう人がほとんどです。
でも実は、自分の人生を考えるときには、圧倒的な自己理解が必要です。自分は何が好きで、何がしたくて、何に価値をおいているのか。そういうことについて理解を深めることが、人生の豊かさにつながると考えています。
このとき、言語化することも重要です。言葉にして伝えられると、自己理解が深まると思います。
もう一つの鍵が「共創力」です。自分一人でやれることには限界がありますが、チームで共創するとできることが増えます。自分の得意を活かしつつ、自分の苦手な領域は得意な人に協力してもらえば、得意なことだけやることもできるんですよね。
ただ、自分の得意なことがわかっているという「自己理解」がこの前提にあります。
だから、この2つを組み合わせることが、「人生の豊かさ」に繋がると思っています。
世界を「ジブンゴト化」できるのが旅
ー恩田さんの思う、旅のいいことってなんでしょう。
恩田倫孝さん:二つあると思っていて、一つは哲学的ですが、「自己存在の認識」です。
旅は日常ではなく「非日常」で、自分のコンフォートゾーンを出て、他者と関わる機会が多くあります。だからかえって、「他者とは違う自分」の輪郭がはっきりしてくると思うんです。
もう一つは、「自己の拡大」です。例えばどこかで地震があったというニュースを聞いて、あの人は大丈夫かな、と思ったり、旅を通じて関係する他者が増えることで、自分事が増えていく感じがあると思います。この自分の存在が広がっていく感覚も、旅の魅力だと思います。
ー改めて、恩田さんにとって「旅」とは、どのようなものでしょうか。
世界をジブンゴト化できる行為だと思っています。
旅を通して、身体的に直接、実体験から学ぶことができます。本や動画ではわからない、現地の空気感も含めて、体験できるんですね。これは旅でしかできないことなので、学ぶことが好きな自分にとって、旅への原動力にもなっています。全く知らなかったことも知れますし、知っているつもりだった自分のことも、より知ることができます。
自分の周りから、幸せを広げたい
ーこれからのビジョンを教えてください。
恩田倫孝さん:仕事に関して言えば、「旅」と「教育」のかけ合わせを通じて、より多くの旅好きな人たちの人生を豊かにしたい、と考えています。
人生を考えるスクールは他にもありますが、「旅」という切り口から「人生の豊かさ」を考えるのは、POOLOだけです。自分の人生の軸にも合うので、これは自分が担わなくてはならない、と使命のようにも感じています。
加えて、その豊かさが拡大していけばいいな、と思っています。
実は、パスポートを持っている日本人の人口は、全人口の20%ほどです。少ないと思うかも知れませんが、この20%が旅を通じて豊かな人生を考えて、旅で得た知見を周囲の人に伝えたり、周りの人を幸せにできたりしていけば、どんどん影響が広がっていきますよね。それを期待しています。
個人的なことを言えば、自分の地元の新潟への貢献と、地元の新潟の魅力を活かした社会への貢献もしたいです。仕事を通じて、新潟の人や旅好きな人など、自分が関係をもつ人を増やして、繋げて、お互いのためになることを一緒にできる仕組みが作れたら、と思います。
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今回は、恩田さんの世界一周のお話や、旅についての考えをお聞きしました。
印象的だったのは、「旅」をあくまで人生を豊かにする「手段」として捉えていること。
それが旅じゃない人ももちろんいて、でもまずは自分が影響を与えられる「旅好き」の人生を豊かにしたい、恩田さんはそんな思いだとわかりました。
言われてみれば、自分のことって意外とわからないですよね。
皆さんも、もう一度自分のことを分析してみるといいかも知れません。
shabellbaseでは今後も多種多様なキャリアを築く方々を紹介しています。
あなたの夢探しやライフプランに役立つヒントを見つけてみてください。
- 恩田 倫孝さん
おんだ みちのり|会社役員『観光という手段で人生を豊かに、世の中に貢献を』
旅好きの人生を豊かにする学校「POOLO」学長&旅行ベンチャーTABIPPO執行役員CCO。慶應理→商社→世界一周。51カ国渡航。飲み会好きな新潟人。