将来独立したい!ファーストキャリアや起業前にすべきことを経営者に取材

田中雄介のサムネイル

「将来は自分で起業したい」
「会社を退職してフリーランスとして独立したい」
就活生や若手会社員の中には、このようにゆくゆくは起業や独立がしたいと考えている方もいるのではないでしょうか。
しかし、実際に何をすればいいのか、どのような準備が必要なのかわからずに、ただ漠然と起業への想いだけを抱えながら毎日を過ごしていませんか?
今回は、そのような方々に向けて、実際に起業して活躍をしている株式会社AUU代表取締役の田中雄介氏にお話を伺いました!
独立の意志はいつから持っていたのか、就活時の会社選び、入社後の働き方や実際に起業に踏み切ったタイミングなど、経験者ならではのリアルなエピソードの数々をご紹介します。

好きなことにひたすら打ち込んだ学生時代。就職活動は「この人と働きたい!」と思えた企業を選定

トランポリンをする田中雄介

ーどのような学生時代を過ごしましたか?

田中さん:僕は小学校から大学まで一貫の私立校だったので、小学校受験以降は、興味のあることや自分がやりたいと思えるものに没頭して毎日を過ごしていました。
一番はスポーツに打ち込んでいましたね。中学時代は水泳部に、高校時代はトランポリン部を創設して本気で打ち込んでいました。
トランポリン競技を始めたきっかけは、一貫校特有の自由な生活を謳歌しすぎたこともあり、高校1年生の時に留年をしまして。
その時に、恩師に「トランポリンをやらないか?」と声を掛けて頂き、自分を律する意味もあり、本格的にトランポリンを始めました。
好きな事にはとことん打ち込む性格の自分に合っていたのか、選手としても着実に成長し、高校三年生で全日本選手権大会に出場、大学時代には国際大会にも出場しました。
自分が所属していた大学の器械体操部としては42年ぶりの国際大会出場ということもあり、今、思い返せば当時の自分は相当過信していたと思います(笑)。

ー大学生活も終盤に近づき就職を意識し始める頃には、ご自身も就職活動を始めましたか?それとも既に起業を考えていましたか?

田中さん:大学3年になり、いよいよ周りが就職ムードになってきた時期も、トランポリンでもっと上を目指したいと練習に打ち込んでいました。
しかし、夢であったオリンピックには力及ばず、就職を決意した時「次は競技の世界から、ビジネスの世界で勝負したい。」と考えるようになりました。
過信していた私は「企業から自分に声を掛けてくれるはずだ。」と本気で信じていました。
今考えれば、とんでもない話です(笑)。奇跡的に数社からお声掛けを頂き、紹介も含め色々な企業・業種の方にお会いさせて頂く中で、自分に合った仕事がしたいという思いが強くなり、「この人と働きたい!」と思える会社への就職を求めるようになりました。

起業という選択肢については、当時の僕はまだ知識も経験もやりたいこともなく、就職一択でした。
ただ、高校時代から独立心は芽生えており、「“田中雄介”という人間が、世に生まれなければ、世の中になかったものを創り出したい!」という気概があったことも事実です。
しかし、学生時代の僕は世間知らずで、知識もノウハウもない。何をどうすれば良いのか。事業計画どころではないですよね。
そこで、まずは就職して、経験を積んでから自分の夢を形にしていこうと思いました。
そのような意味で、就職することに全く抵抗はなかったです。

会社を選ぶ際は、たくさんの方にお会いして、「この人と一緒に働きたい!」と思えるか、という基準で選ばせていただきました。
業種や職種には全くこだわらず、リクルーターの人柄や、その会社の社員の人柄だけで決めました。
今では本業で、「人と人との繋がり」を仕事の軸にしておりますので、昔からブレはないと思っています。

13年3ヶ月の会社員生活。その全てが学びと挑戦

株式チャート

ーそこから13年3ヶ月の会社員生活が始まるわけですね。

田中さん:入社したのは大手の証券会社でした。そこでは本当に様々な経験をさせて頂きました。
営業から人事まで経験させて頂き、何千という企業、そして学生と関わらせて頂きました。
特に営業だった時は、多くの経営者の方々と深く交流し、直接お話を聞くことができた経験は、その後の起業にも大いに役に立ったと思っています。
またリクルーターとしても約3000人の学生と接触し、20数名の採用に関わらせて頂いた経験も大きな財産です。

会社員だった時も常に高みを目指し、何事にも全力で取り組んでいました。
アスリートとして目標に向かう姿勢を持ち続けることが習慣になっていたので、社会人になってからもやると決めたことは何が何でも実行に移していました。
起業のことは頭の片隅にありましたが、目の前の課題に全力で向き合い、やるからには、その会社で社長になる事を目指して仕事に邁進していました。
実際に結果を認めて頂き、2期連続の個人CEO表彰や、部店CEO表彰も経験させて頂く事が出来ました。
やりがいもあり、会社員としてキャリアを積むという選択肢も勿論ありました。

機が熟して、いよいよ起業を決意。業界再編が加速する時代に必要とされるサービスを

ビジネスパーソンと握手をする手

ー充実した日々を送る中で、「いつかは起業を」という想いが、どのようにして具体性を持ち始めたのですか?

田中さん:勤続10年を迎える頃、金融業界全体も変革の時を迎えていました。
僕が勤務していた証券会社も、営業部店では有価証券取引による手数料収入が主流でしたが、時代は変わり価値観も多様化する中で、有価証券の売買手数料のみでは限界があることに業界が気付き始めたのです。
お客様のビジネスが発展するために、自分たちはどのような関わりができるのか……。
金融機関の取り扱えるサービスも多様化し、お客様の課題解決をサポートするビジネスモデルにも注力していきました。
僕自身もお客様からご相談頂く内容が「儲けたい」から「この課題をどうしたら良いのか」に変わっていく様を肌で感じており、どうすれば、お客様の課題解決に貢献できるのかを考えるようになりました。

お客様の課題解決にもっと真剣に向き合いたい、自分にしかできない関わりの形があるのではないかという想いはさらに強くなりました。
そこで、まずは初動として社内の職種転換制度を利用して、全域型の営業職から地域密着型の部署に職種転換し、課題解決に特化した案件チームをつくり取り組みました。
課や部署を超えて、お客様の課題をヒアリングし、会社の持つネットワークを駆使して、お客様にお繋ぎし、課題の解決に尽力しました。
この新しい手法が予想以上にお客様の満足度を高めました。
1年間継続すると、有価証券取引以外の案件成約の件数が3倍、収益が2倍となり、僕にとっては革命的な結果となりました。
もともと人との関わりを主軸に仕事をしてきたので、人と人、人と企業、企業と企業をお繋ぎする仕組みで課題解決の結果を出せたことは本当に嬉しかったですね。
なによりも、ビジネスとしての可能性も感じました。業界再編が加速する時代において、金融機関に留まる話ではなく、社会全体で求められていると強く感じた為、いよいよ起業に向けて始動しました。

ー起業を決めてから、社内でどのようにしていましたか?

田中さん:僕はオープンな性格のため、起業の意思は社内でも多くの方に伝えていました(笑)。
地域密着型の部署に移り、2年後に起業を決意しましたが、退職するまでの数カ月間、その時の同僚や上司、支店長やお客様に至るまで、様々な立場の方より多くのアドバイスを頂きました。
皆さま、本業でお忙しいのにも関わらず、僕の新規ビジネスに対して惜しみなくアドバイスを頂けたことは今でも感謝をしておりますし、僕は本当に人に恵まれていると思っています。

ーそして、満を期して13年3ヶ月の会社員生活に終止符を打つわけですが、その時の心境はどのようなものでした?決心は揺らぎませんでしたか?

田中さん:実は、起業を決めてから退職するまでの数カ月間ほど怖くて辛いものはなかったです。
手放すものの大きさが改めてわかり、色々と思うところはありました。
当たり前のことですが、会社員でいる以上は、毎月収入がありますよね。
自分が何の心配もしないで起業準備をしていられるのも、会社からのお給料が出ているからであって、いざ独立して起業をしたらこれがなくなるかと思うと不安だらけでした。
人との縁は退職したからといって切れることはないと思っていましたが、お金だけはそうはいかない。
いかに自分が会社に依存していたのか痛いほど実感しましたね。
とはいえ、起業の意思は揺らぐことはなかったため、覚悟を決めて退職に踏み切りました
僕には妻と子ども2人の家族がおりますが、妻は応援してくれるだけではなく、新しいビジネスが軌道に乗るまでの数カ月間、中小企業の経理事務として家計を支えてくれました。
会社でも人に恵まれましたが、家族にも恵まれ、妻には感謝しかありません。

会社員生活で得たものは、やり抜く力と目標に向かう姿勢

目標への道筋

ー会社員生活で得たものや、もっとも良かったと思うことは何ですか?

田中さん:目標に対するこだわりを持つという姿勢を学んだことですね。「やると決めたら絶対にやりきる」という癖がつきました。
自分が在籍していた会社のイズムというか、DNAというか……13年も在籍していたので、そういうものが染み付いたのだと思います。
目標達成に向かう過程では、自分にも他人にも厳しかったですね。しかし、それは良い部分でもあり、逆に苦労した部分でもあります。
というのも、僕が在籍していた会社は堅固な社風といいますか、上下関係には厳しく礼節を重んじるようなところもありました。
社内はもとより取引先においてもそのような共通認識があったので、ビジネスをやる以上は厳しさが当たり前みたいな風潮がありました。
しかし、起業してから出会った経営者を含むスペシャリストの方々の価値観は多様性に富んでおり、寛容さを持ち合わせないと長い付き合いはできません。
自分の常識や良識に囚われず、その方の本質的な部分を引き出せるようになるまでには時間がかかりました。

一方、営業に携わる時間が長かったため、対話力やヒアリング力などは確実に身に付いたと思っています。
営業手法についてはたくさんの経験を積むことで勉強しましたが、僕はとにかく先方の話を聞き、どうしたいのかを引き出すような傾聴型の営業であったため、今でもお客様との関係構築においてはそのようなスタイルを貫いています。
自分が良かれと思うやり方を提案するのではなく、お客様の目指すゴールに向かって共に考え、最善の方法を模索します。
おかげさまで起業してからはお客様からのクレームは皆無で、日々マッチングの事例も積み上がっております。

人生をかけて取り組みたいことは何か。自分自身と向き合うことで見えてくるキャリアプラン、その延長に起業はあるのか

インタビューを受ける田中雄介

ー今後のビジョンや、目標を教えて下さい。

田中さん:私のビジネスの根底にある考えは、「人と人との繋がりが課題を解決する」というものです。
これまでの人生を振り返っても、悩んだ時やピンチの時には、いつでも人との関わりや関係性の中で解決することができました。
人と人、人と企業、企業と企業における課題の解決策も同様で、企業の成長や課題解決のためには協力や協働が不可欠であると考えています。
日本企業は、世界の名だたる企業と比較するとマーケット含め事業規模はまだまだ小さいと言えますが、様々な国や企業と協力することによって、日本発の企業が世界レベルの時価総額へと成長することは可能だと考えます。
世界中の人と企業とサービスを整理・集約し、情報のデータバンクとしての立ち位置を確立します。
日本発の100兆円企業へと成長し、世の中の人と人の出会う方法に革命を起こし続けていきたいと考えています。

ー独立や起業を考えている若い世代の方へ、メッセージをお願いします。

田中さん:最近はSNSなどで、多くの起業家や社長の姿に触れることができます。
それらを見て、「かっこいいな」と憧れを抱いて、形から起業を志すのであれば、それは注意が必要です。
今の時代は、業界再編が加速し、時代の流れが速くなっていると感じます。
より変化に対応する必要がありますが、生き方も働き方も多様になりビジネスチャンスも広がっています。
しかし、何事も物事の本質を考えることは大切だと感じています。
今自分が打ち込んでいることや、目の前の事を楽しみながら一生懸命取り組むことは、スポーツや趣味はもちろん、ビジネスにおいてとても大切だと思っています。
アレもコレもやって、ダメだったからすぐ辞めて……という悪循環に陥る事があるかと思いますが、それだと結局、いつまでたっても達成感を味わえないし、自信にも繋がらない。
これだけ様々なチャンスが広がっている世の中だからこそ、まずは目の前のことに本気でチャレンジし、自分の立てた目標を一つ一つ達成していく。仮に目標に到達できなかったとしても反省点を修正して次の目標に向かっていく。これを繰り返していく中で視野を広げていくと、自分の「新しい可能性」や「やるべきこと」、「夢や目標」が見えてくるのではないかと思っています。

僕は前職時代にリクルーターとして、多くの学生と対話をしましたが、接する学生にはいつも「自分のやる気スイッチの本質を見つけよう」と伝えてきました。
幼少期から今に至るまで、好きなことや打ち込んできたことがあるかと思います。
それらを「なぜ選択したのか、なぜ一生懸命に打ち込めるのか?」と逆算して考えてみて下さい。
一つ一つの自分の行動や選択に対して、「なぜ?」と問うことで、自分が心を動かされる本質が自ずとわかってくると思います。
その「やる気スイッチ」の延長上には無限の可能性があるでしょう。
もし、自分が人生をかけて取り組みたいことが、会社に属さなくてもできることであれば、独立や起業もありだと思います。
しかし、独立や起業は決して簡単なものではありません
勢いや情熱も大事ですが、知識や経験、そしてノウハウなどがあれば、自分のビジネスを成立させる可能性が高まります
そのような意味で、一度就職をして世の中を知るという選択肢もあります。
働きながら見えてくることもありますし、そこでの経験もかけがえのない財産となることでしょう。

僕自身、13年3ヶ月の会社員生活を経てから起業しましたが、悩んだ時、迷った時はいつも人と会うことで解決してきました。
起業に向けて公私関係なく協力をしてくれた同僚や上司、共に課題解決に向かって奔走した同志ともいえるお客様などとの関係は今も続き、新しい協業体制を実現させています。
独立や起業をスタイルとして目指すのではなく、自分が人生をかけて実現したいことの延長には、どのような選択肢があるか考えてみることが大事なのではないでしょうか。

クラシックバレエをする田中雄介

***

今回は、株式会社AUU代表取締役の田中雄介さんのお話をご紹介しましたが、独立までの道のりは人それぞれです。

shabellbaseでは今後も多種多様なキャリアを築く方々を紹介しています。
あなたの夢探しやライフプランに役立つヒントを見つけてみてください。

田中雄介さん
たなか ゆうすけ|経営者


1982年生まれ。神奈川県出身。
2006年慶應義塾大学卒業後、野村證券株式会社に入社。個人・法人のリテール営業を経験し、2期連続CEO表彰。
本社勤務、営業店を経て、2019年6月に野村證券を退職。同年7月に株式会社AUUを設立し、代表取締役に就任。Humanity is a Team. 課題解決型ビジネスマッチングのプラットフォーム「AUU Online」を運営。

AUU Online:https://auuonline.com/yusuke-tanaka

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